利用者は完全無料で決済手数料も安価なpring
個人間送金などの機能を備え、「お金コミュニケーションアプリ」として提供されているサービスがpringだ。同社代表取締役CEOの荻原充彦氏は、QRコード決済や送金のサービスではなく、お金にまつわるコミュニケーションを可発化させる新しいマーケットを作ろうと立ち上げたサービスだと説明する。
お金のやり取りをする際の気まずさや、貸し借りにおける記憶の行き違いなどを解消するために、簡単にメッセージをする機能や履歴・通知の機能を備えたことで、気軽にお金に関してコミュニケーションできることを目指した。
また、みずほ銀行やメタップスとともに立ち上げたサービスであるため、連携する銀行口座はみずほ銀行や三井住友銀行、一部の地方銀行において、口座からアプリにチャージして個人間送金をする、QRコードやバーコードでの支払いといった機能を提供している。他のサービスや電子マネーとの最大の違いとして、荻原氏は「資金移動業者と登録しているため、連携した口座に現金として戻すことができること」を挙げた。
さらに、送金や支払い、チャージ、出金にかかる手数料はすべて無料となっている。「みずほ銀行と三井住友銀行を口座連携すると、一方の銀行からチャージして、他方に出金すると、手数料0円で口座振替ができる」(荻原氏)という"裏技"も。
pringは1円単位の送金を無料で行うことができ、そのまま無料で現金化できるというのは大きなメリット。荻原氏は「スマートフォン上で完結するため、割り勘などの代金徴収もメッセージでやりとりすることで、コミュニケーションを円滑にできるのではないか」とアピールした。
加盟店拡大の課題として挙げられるのは、加盟店の決済手数料が高額な点だ。既存のクレジットカードや電子マネーなどでは、安価でも3.24~3.25%程度の手数料がかかる。これに関して、荻原氏は「シンプルなネットワークを作って原価を極力ゼロにして消費者に還元したい。ユーザー向けは完全無料、店舗側は1%前後の手数料で、業界最安の世界を作っていこうと思っている」と意気込んだ。
加盟店にとってはコスト面も気になるところだが、スマートフォンやタブレットがあればすぐに導入でき、店舗にQRコードを張り出して客側がそれを読み取って支払いができるため、導入コストがかからない。
さらに、今後は加盟店に集客支援事業も提供する。これにより「加盟店は決済手数料が下がった分、マーケティングなどに予算を回して顧客拡大を目指す、といった戦略が可能になる」(荻原氏)という。
それに加えて、企業と連携してユーザーの獲得を狙う。日本瓦斯との提携では、約1,000人の検針員や配送業者向けにpringの送金機能を使った報酬支払いを提供。銀行口座を介さずに送金できるため、銀行の手数料が不要になる。こうしたエコシステムを構築することによって、ユーザー層の拡大を図る考えだ。
現在はメガバンク2行に対応しているが、荻原氏は残る三菱UFJ銀行についても対応したい考えを示す。また、加盟店の拡大については、みずほ銀行・東邦銀行とともに福島県富岡町周辺の施設・店舗でpringのキャッシュレス決済の実証実験を行う。