なぜナッシュビルで試乗会なのか
とにもかくにも、新型「ES」の開発には気合が入っている。最初の試乗会の地に米国はナッシュビルを選んだのも、全米で最も変革している街だからだという。
カントリーミュージックの中心地として知られるナッシュビルだが、それにとどまらず、様々なジャンルの音楽やエンターテインメントの発信地として近年、求心力を高めている。また、移民に対してウェルカムな政策がとられており、その多様性が活気につながっているようだ。
たまに米国を訪れるが、そのほとんどはロサンゼルスやサンフランシスコといった西海岸かニューヨーク近辺。そういった地域とは全く違った古き良き米国といった雰囲気をナッシュビルは持っていた。“洗練されてはいるが田舎っぽい!?”と評したら失礼だろうか。日本にいると、トランプ大統領が当選し、今でも高い支持率を保っていることをちょっと不思議に思ったりもするが、米国は広く、真の姿はなかなか見えにくい。ちなみに、トランプ大統領が尊敬してやまないアンドリュー・ジャクソン第7代大統領の地元はナッシュビルだという。
流行の先端をゆくクーペルック
「GA-K」と呼ぶ新しいプラットフォーム(車台)を導入したことにより、レクサスでは新型「ES」のデザインと走りを大幅に進化させることが可能になった。低重心化が1つのテーマでもあるGA-Kは、パワートレーンなどのユニットをなるべく低くレイアウトしているのでボンネット高も下げられる。ワイド&ローなプロポーションを造りやすいのだ。
実際に目のあたりにした新型「ES」は、想像よりも立派な体躯であり、駆動方式がFFかFRかをあまり意識させないスタイリッシュなエクステリアだった。一般的にFFは、フロントアクスル(前車軸)がFRよりも後ろ寄りになる。ロングホイールベース・ショートオーバーハング(前後輪の間は広く、車軸より外側の部分は短い形)はクルマのカッコよさの基本であり、その点ではFRの方が有利なのだが、「ES」は全長4,975mmに対してホイールベース2,870mmとまずまず。ちなみに、FRの「GS」は全長4,880mm、ホイールベース2,850mmだ。
だが、フロントドア前方の切り欠きとフロントホイールアーチの距離はFRよりもちょっと短くて、やはりFFなんだなとうかがい知れる。もう1つ、ロングノーズ・ショートキャビン(先端が長く、人が乗る部分は短い形)もクルマの普遍的なカッコよさだが、「ES」はフロントピラー(フロントガラス横の柱)を後方寄りにすることで、ノーズを長く見せている。
加えて、リアピラーをなだらかに傾斜させ、サイドウインドーを天地が狭く横方向に伸びやかかつシャープにしてあるので、キャビンが小さく見える。一昔前まで、セダンと言えば箱を3つ合わせたような「3BOX」スタイルが主流だったが、最近のプレミアム・ブランドではクーペルックがトレンド。レクサスも昨年発売の「LS」、そしてこの「ES」が先端を走っている。レクサスにとってフロントマスクのアイデンティティとなっているスピンドルグリルは、縦フィン形状としているのがESの特徴。「Fスポーツ」というグレードでは、グリルメッシュとして差別化を図っている。