実は伸びているハッチバック市場
まず、カローラ店で販売するカローラ スポーツが、トヨタにとってどのような立ち位置になるかについては、「(カローラ店には)『アクア』『プリウス』があるが、その間を埋めるのがカローラのポジショニングだ。価格的にも、間を埋めるような商品になっていく」とする。ハッチバックなのでアクアとポジションが重なりそうだが、「アクアとはセグメントで立ち位置が違う。カローラはCセグメント、アクアはBセグメントだ。装備や使っている材料、タイヤの大きさなどにも違いがある」とのことだった。
次に、ユーザーの若返りを図りたいというトヨタの願いが前面に出ているカローラ スポーツだが、既存の顧客層に対する気配りはどうなのか。この問いに対して小西CEは、このクルマが搭載している安全装備の充実ぶりに触れつつ、「自動ブレーキがちゃんと効く、長距離走行時にステアリングのサポートが受けられる」などのポイントを挙げ、年配のドライバーでも安心なクルマに仕立ててあることを強調した。ハッチバックに続いては、既存モデルと同じセダン、ワゴンの発売も計画しているという。
そもそも、なぜハッチバックにしたのかについては、「ハッチバックというクルマの市場が少しずつ伸びている」ことも背景にあるとする。「顕著なのが米国。これまでの米国のイメージにはないクルマだが、ホンダさんの『シビック』はハッチバックがすごく売れていると聞く。国内でも例えば『アクセラ』(マツダ)などがある。流行のSUVよりはコンパクトだが、荷物がしっかり入って、取り回しがしやすく、価格も低いというクルマのニーズが出てきている」というのが小西CEの市場分析だ。もちろん、若々しいイメージを押し出すべく、あえてハッチバックから新型カローラをスタートさせた側面もある。
「次の50年」発言の真意は
最後に、小西CEのプレゼンテーションで気になった「次の50年」という言葉についても、真意を聞いてみた。豊田章男トヨタ社長が言っていたことだが、自動車業界では100年に一度の大変革が起きている。自動化や電動化が、どのくらいの早さで進むかは誰にも分からない中で、次の50年を見越した新車を開発することなど可能なのだろうか。
「正直、クルマが50年先にどうなっているかは私にも分からないが、カローラはこれまで、安全・安心、信頼性が高い、使い勝手がよいという、『ベースのところ』をどの時代にもキープしてきた。そのベースをキープした上で、お客様と社会が求める、その時代にあった価値を、姿かたちを変えつつ提供してきたのがカローラの歴史だ。モビリティである以上、50年後も信頼性などの大切さは変わらない。その時代にニーズのあるものを、将来のチーフエンジニアが付与していくことになる」
つまり、時代に即した変化を遂げつつも、ベースの部分は不変というのがカローラの本質ということだ。そういうクルマであるだけに、10年後のカローラが自動運転になっていたり、次のカローラが電気自動車になっていたりしても不思議ではない。実際のところトヨタは、中国でカローラのプラグインハイブリッド車(PHV)を発表していたりする。
「トレノ」と「レビン」のベースとなったクルマと聞けば、若々しさやスポーティーといった印象とは無縁でないと思われるカローラだが、今では「カローラという名前自体を知らない人も20~30代には多い」と小西CEは率直に認める。今回のハッチバックで、次の50年も乗り継いでくれるような新しい顧客と出会えるかどうかは見ものだ。