これに加えて、あるApple Watchの新機能は、前述の天気アプリの強化とともに、中国市場をターゲットにしていると考えられる。それは、Walkie-Talkie機能、日本語でトランシーバーを示す新アプリだ。
トランシーバーはご存じの通り、半二重といわれるコミュニケーションで、片方が喋っているときは片方が聴くという仕組みだ。ちなみに電話は全二重と言われ同時に話し声が相手に届く。このトランシーバーは、画面に表示される巨大な「TALK」ボタンを押すことで相手に声が伝わるしくみだ。
ただし、過去に存在していた米国におけるPTT(Push To Talk)や日本のプッシュトークなどの回線交換を利用する仕組みではなく、データ通信かつエンド・トゥ・エンドの暗号化によってやりとりされる。通話料などはかからずデータで利用でき、iPhoneとのペアリング、もしくはApple Watch単独ならWi-Fiやセルラー通信が可能な環境下で実現する。
また受信を許可した相手なら、自動的に声が届く、まさにトランシーバーそのものの動作をする仕組みを備えている。暗号化やデータを利用する点から、全二重の音声通話を実現するFaceTimeオーディオを半二重にしたようなものにも見えるが、通話状態を維持することなく声を届けられる点で、「半つながりっぱなし」のような感覚で利用できるのではないだろうか。
このアプリは手首での声による手軽なコミュニケーションを実現するが、中国市場で人気を博すかもしれない、と考えている。
というのも、中華圏の人たちは、WeChatなどのチャットアプリに声を直接吹き込んでコミュニケーションを取る風景が多く見かけられるからだ。その事情を反映してか、iMessageにも、声を直接届ける機能が盛りこまれている。それを手首だけで手軽にこなせる仕組みは、声による新しいコミュニケーションの提案であり、中国市場でApple Watchの普及を爆発させる可能性を感じさせる。