機能の向上と活用の幅の拡がりに期待を持たせてくれるFaceTime。前述の通り、FaceTimeはAppleデバイス間でしか利用できない機能であるため、AndroidやPCでも利用できる他のコミュニケーションシステムに対して不利な面があるのは否定できない。

今回のグループFaceTimeやMemojiでの参加も、他のサービスに追いついたと見るべきであり、FaceTime自体がiPhoneの利用動機を牽引するだけの役割を担うわけではない。もちろんiPhoneを選ぶ理由はそれだけではなく、より多様な魅力のうちの1つという位置づけではあるが、コミュニケーションのサービスは得てして、利用する人数が多いほどより普及する「ネットワーク効果」が働く。

すでにAppleの稼動デバイスは10億台であることが明かされており、少なくないエコシステムとなっているとは言えるから、「ネットワーク効果」が相俟ってということになれば、それなりの利用者は獲得でき、サービスとして定着していくことだろう。

また、友人同士のコミュニケーションにはLINEやFacebook Messengerを使い、家族間はiMessage/FaceTime、という使い分けをしている人は周りに少なくないのだが、この視点からすれば、Appleのコミュニケーションサービスは一定の地位を確保していると見ることもできよう。

しかしながら、スマートフォンの世界的なシェアとなると、iPhoneが獲得できているのは15%に留まっているという現状がある。今後、AppleがiMessage/FaceTimeを標準プラットフォームとして業界に働きかけるという可能性はないわけではない。が、そこには、セキュリティ、プライバシー保護の問題が立ちはだかる。もし、iMessage/FaceTimeを競合他社にも開放するとなれば、セキュリティ、プライバシー保護の確保とセットになっていくのではないかと想像される。経営思想に矛盾のないようにするには、そうする以外、道筋を付けるのは難しいだろう。

松村太郎(まつむらたろう)


1980年生まれ・米国カリフォルニア州バークレー在住のジャーナリスト・著者。慶應義塾大学政策・メディア研究科修士課程修了。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)、キャスタリア株式会社取締役研究責任者、ビジネス・ブレークスルー大学講師。近著に「LinkedInスタートブック」(日経BP刊)、「スマートフォン新時代」(NTT出版刊)、「ソーシャルラーニング入門」(日経BP刊)など。ウェブサイトはこちら / Twitter @taromatsumura