Lightningコネクタは独自規格とはいえ、すでに6年間使われており、iPhoneユーザーの間では完全に定着している。ではDIGITIMESの報道が正しかったとして、なぜType-Cに変更する必要があるのだろうか。
第一に考えられるのは、コストの問題だ。LightningコネクタはApple独自であり、いかに単独でのシェアが大きいiPhoneとはいえ、コスト面で汎用品であるType-Cにはかなわない。MFi認証から得られるライセンス料が失われることになるが、Appleの売り上げ全体から見れば些細な額だろう。損失分は、ケーブルやコネクタの調達で相殺できると見込んだのではないだろうか。
第二の理由が、iPhone 8/Xでスタートした無線充電の採用だ。今後、iPadをはじめ、ほかのApple純正周辺機器にも無線充電機能を搭載していけば、わざわざケーブルの種類にこだわる必要もなくなる。iPhone自体、バックアップやアプリのインストールもほとんどがクラウドに依存するようになって、MacやPCと接続する機会が減っており、ケーブル接続にこだわる意味も薄れているはずだ。ならばどこでも充電しやすいよう、汎用品に合わせてしまってもいいだろう。
また、政治的な理由も考えられる。欧州ではスマートフォン用のケーブルが複数存在することを問題視し、2014年に、2017年ごろまでをめどに、スマートフォンの充電規格をmicroUSBに統一する「Common external power supply」指令(Directive)を出した。実はアダプターで変換すればいいという解釈なため、Appleは現在でもEU圏でLighitningケーブルのみをiPhoneに付属して販売しているが、USB Type-Cに変更すれば、これに統一することで、ルールに反した状態にあるという印象を払拭できるだろう。
AppleはiPhoneが登場するはるか前、AV Macと同時に登場した「ADC」(同名のコネクタはG4時代にも登場した)の頃から、電源と映像、音声その他の信号を1つのケーブルにまとめることに腐心してきたメーカーだ。Lightinig登場前にも統合ケーブルの特許を取っており、AppleがLightningコネクタを開発した背景には、なかなかType-Cコネクタの策定が進まないことに業を煮やしたため、という説もあるほどだ。Lightning設計時よりもUSBが十分高速化し、さらにほかの規格を取り込めるようになったことで、Lightningの役割が終わったと考えるのは不思議ではないだろう。