Lightningコネクタと同様に、両面利用できるコネクタとして登場したのが「USB Type-C」だ。こちらは2014年に規格が策定され、USB 3.1とほぼ同時に登場したため、「USB 3.1=USB Type-C」と思っている人も多いが、あくまで「Type-C」はコネクタ形状のみを示すものだ。

  • USB Type-Cコネクタを搭載するエレコムのUSBハブ「U3HC-A412B」。PCとの接続(アップストリームポート)と、分岐する4つのポートのうち2つがType-Cになっている。隣のType Aポートと比べると小ささが際立つ

Type-Cがあるということは、当然その前もある。「Type A」がパソコン本体に付いている、大きめで長方形のコネクタ。「Type B」が周辺機器、特にプリンターやハードディスクなど大きめの製品についている、台形じみた六角形のコネクタだ。なおUSB 3.0では信号線が増えて高速化したため、Type B(3.0)は六角形の上に四角が乗っかったような奇妙な形状をしている。

  • グリーンハウスのUSB Type B(3.0)対応ケーブル「GH-USB30」。左側がType B(3.0)ポートだ

USBはモバイル機器向けに、サイズの小さな「mini A/B」や、さらに小さい「micro A/B」といったコネクタも登場した。Aコネクタはほとんど使われていないが、micro Bコネクタは今でもスマートフォンやデジタルカメラなど多くの機器で使われているため、ご存知の方も多いだろう。ところが、USB 3.0の登場で信号線が増えた結果、micro B(3.0)コネクタでは、従来のmicro Bコネクタの横にさらにもう1つコネクタが追加されたような形になってしまった。

  • micro B(3.0)コネクタは横に広い。micro Bコネクタのケーブルも利用できるが、その場合はUSB 2.0相当の性能しか出せない

USBが拡張を続けた結果、コネクタやケーブルの種類ばかりが増えてしまい、利便性も経済性も、小型化のメリットすら失われてしまったため、こうした混乱を解決するべく開発されたのが、小型で両面利用可能な「Type-C」というわけなのだ。

USB Type-Cは24ピンのアダプタで、Lightningと同様に上下の区別なく、両面が同じように利用できる。Type AとBの両方を置き換えることを前提に設計されており、周辺機器だけでなく、PC側(ホスト側)にもType-Cが搭載できる。Apple製品としてはMacBookシリーズが最初に採用しており、現在はMacBook ProとMacBookがUSB Type-Cのコネクタを採用している。最近はWindows PCでも採用が増え始めている。

USB Type-Cは「オルタネートモード」(Alternate Mode)と呼ばれる仕組みを利用して、USB以外のプロトコルの信号を流すこともできる。これを利用することで、USB Type-Cコネクタは汎用的なコネクタとしてDisplayPort、HDMI、MHL、Thunderboltといった各規格でも利用されている。このため、例えばMacBook ProはUSB Type-CポートをThunderbolt 3ポートとしてストレージなどに接続したり、HDMI/DisplayPortとしてディスプレイに接続することもできる(適宜変換アダプタが必要な場合もある)。

もう一つ、これは実際にはUSB Type-Cの機能というわけではないのだが、USBを使った給電規格「USB Power Delivery」(USB PD)にも対応している(厳密には「対応している製品もある」だが)。USB 3.1 Gen1ではポートあたり5V・900mA(=4.5W)までの供給が可能だったが、USB PDでは最低で5V・2A(=10W)、最大20V・5A(=100W)まで、5段階の電力供給が可能であり、実際にMacBook Proの15インチモデルなどは87Wという大出力をUSB Type-Cケーブルから供給している。ちなみにUSB PDを利用するには、USB Type-Cコネクタに「eMarker」というチップが内蔵されている必要がある(このチップが自分のサポートする電力プロファイルなどを記録しており、その情報に合わせて電力が制御される)。

上記のように、ディスプレイや周辺機器、さらに電源の接続までも1種類の汎用コネクタで統合しようという野心的な試みがType-Cなのだ。