アンドロイドに宿る、プレイヤー(人間)の心
アンドロイドの思考はコンピュータプログラムであり、仮にAIと呼ばれるレベルの高性能プログラムだったとしても、プログラムはプログラムでしかありません。でも、そのプログラムに心=感情が芽生えたとしたら? アンドロイドを操作しているプレイヤーが感情を与えたとしたら、そのアンドロイドは単なるロボットなのでしょうか。
カーラ編のあるシーンでは、主人から「そこから一歩も動くな」と指令をされた直後、すぐ近くで父親から暴力を受ける娘の悲鳴が聞こえてきます。命令に背いて動き出そうとすると、カーラのプログラムは激しく動揺し、葛藤を始めます。最終的にプレイヤーの操作=感情がプログラムに背いた時、そのアンドロイドは感情のようなものが芽生えた「変異体」となり……。
今からわずか20年後、2038年のデトロイトという、リアルな世界観設定。今、我々が過ごしている世界から想像がつきそうな、ほんの少し未来の世界。 そこでは、人間そっくりのアンドロイドが販売され、「人間の仕事が奪われた」と反アンドロイド運動が各所で起こっていたり、彼らは道を歩くアンドロイドに暴行したり。 けれども、アンドロイドは人間ではないので、アンドロイドを殴ろうとした人も「器物破損になるぞ」と警官に注意されるだけで済む世界。
姿かたちも、話す内容すらも人間と見分けがつかないアンドロイド。唯一の違いは、右のこめかみに輝く、直径数センチの光るリングだけ。
ある老人は、世界で一番の理解者としてアンドロイドを溺愛。ある女児は、自分を父親から守ってくれたアンドロイドを母のように慕う。けれども、その一方でストレスのはけ口として、買ったアンドロイドに暴行をする人間も後を絶たない。
身の危険を感じた時、アンドロイドは自らの身体(命)を守るため、自分に拳を振り上げる人間を殺してしまうケースも。
「不公平だ」
アンドロイドたちは、声を上げ始めていたのです。
そんな状況に対抗するため、人間に歯向かった「変異体」アンドロイドを探し、捕まえるために造られたアンドロイドのコナー。アンドロイドに正当防衛のような法的保護は存在せず、人間を殺めたことをただ罰せられて解体されるのみ。
そんな世界で、アンドロイドはどう生きていくべきなのか。プレイヤー自ら、アンドロイドの視点となり、その行く末を見守ってほしい。
目は口程に物を言う。瞳の演技は、雄弁に感情を表現する
最後に。
皆さんは「不気味の谷現象」という言葉を聞いたことがありますか? これは、ロボット工学者の森政弘さんが1970年に発表した言葉です。CGなどがリアルになっていく過程で、「人間そっくりだけど、どこかが何かが違うから不気味」と感じるマイナス感情に対して使われます。
では、『Detroit: Become Human』のCGはどうでしょうか。私は、完全に「不気味の谷」を超えて、次のステップへ進んでいると感じました。 そうコナーたちの演技を観ていて感心したことがありました。それは「瞳」です。
このゲームは、顔を大アップで映すシーンが目立ちました。そして、キャラクターたちの「瞳の演技」に引き込まれました。
哀しい瞳、怒れる瞳。恐怖、安心、嫉妬、反感……ゲーム内に登場するキャラクターたちが抱いている、さまざまな感情。それらは、台詞や表情だけに止まらず、「瞳の演技」にも現れています。
怒った口調をしているけれども、哀しい目をしている人。
優しい言葉を掛けているけど、感情を失った瞳の人。
声と表情、そして瞳に、身体の動き。たくさんの情報が重なり合って、登場人物が抱いている複雑な感情を表現しています。
ゲーム序盤では機械的な表情しかしていなかったアンドロイドたちの瞳に、少しずつ感情のようなものが宿っていくと……。
もしこのゲームをプレイされる機会があるのなら、ぜひ瞳にもご注目ください。 無料体験版も配布中ですので、ここまで読んでくださった方は、とりあえず体験版だけでもプレイされることをお勧めします。
タイトル:『Detroit: Become Human』
発売日 :2018年5月25日(好評発売中)
ジャンル:オープンシナリオ・アドベンチャー
対応機種:PlayStation4
人数 :1人
CERO :D(17才以上対象)セクシャル・犯罪
発売元 :ソニー・インタラクティブエンタテインメント
開発 :Quantic Dream
備考 :PS4 Pro ENHANCED
(C)2018 Sony Interactive Entertainment Europe. Developed by Quantic Dream.