取水した47トンの水は約12kmの水圧鉄管(導水管)を通って、真壁調整池(真壁ダム)にためられる。こちらは堰が高さ20m以上あるので間違いなくダムだが、堰堤の大部分が地中に埋められており、高さは感じない。
ただ、野鳥にとっては「サンクチュアリ」ともいえるような環境になっている。こちらは一般人の立ち入りが禁止されており、導水管のうえにたまたまできた小島が、外敵から巣を守る役割も果たしている。調整池の設備は立ち入り禁止だが、至近に「愛宕山ふるさと公園」があり、池の景観や野鳥ウォッチングを楽しめる。なかには心霊スポットと思い込み、夜間に訪れる方もいるらしいのだが……。
地元のランドマークでもあるサージタンク
さて、この調整池から水がさらに水圧鉄管をとおり、佐久発電所に送られるのだが、この途中に発電所最大の名所がある。それは高さ約75mのサージタンク。サージタンクは急激に水の流量が増えた際に一時保管場所になったり、取水量が低減したときに水を補ったりできる。水力発電の安定運用を担保する重要な施設なのだ。
そして、何よりも圧倒的な景観を生み出す。サージタンク周辺はサクラの名所で、時期になると満開の花と巨大な建造物という異色の組み合わせを楽しむ花見客でにぎわうそうだ。当日は、特別な許可を得て、サージタンクにのぼれるはずだったが、筆者は脚を痛めており見送った。ほかのメディアの方々が、嬉々としてらせん階段をのぼっていくのを下から見上げたのみだった。
このサージタンクから、発電所に水が送られる。「条管」と呼ばれる傾斜した導水管を水がとおり、水圧を利用して発電機を稼働。最大出力約76,000kWの発電所として機能している。
迫力を感じる水力発電所
これまで、火力発電、原子力発電は見学したが、水力発電の規模感は異質に感じた。取水用のダム、調整池、水圧鉄管、巨大なサージタンクといった設備が広範にわたり、それが昭和3年(サージタンクは昭和63年に再建)に造られたというのだから驚きだ。
近年、「ダムマニア」と呼ばれている方が増えていると聞く。「ダムカード」というカードをコレクションしたり、写真撮影を楽しんだりする方も多いそうだ。人がダムという巨大な建造物に魅せられる証だろう。なお、水力発電100%の「アクアエナジー100」という料金プランが設定された。加入者特典としてダム見学会などが行われるので、興味のある方はチェックしてみては。