ポルシェらしからぬ静かな室内空間
社会的な要求性能である環境適合性とスポーツカーの醍醐味の両立、また中核の「911」などスポーツカー以外の車種での商品性強化の一面を探るため、最新の「パナメーラ ターボ S E ハイブリッド」(PHV)に先頃、試乗してきた。「ポルシェである以上、単なるエコカーではない運転の楽しさを味わってください」との言葉に送られ、ガレージを出発した。
搭載されるリチウムイオンバッテリーにあらかじめ充電がされていれば、通常の走行はモーター駆動のみで十分だ。エアコンディショナーの効いた室内は、モーター走行による静かで快適な空間に保たれ、このクルマがポルシェであることを忘れそうな感覚だった。高速道路へ向かい速度を上げていっても、電力が残されていればモーター走行は続く。このモーター走行が、イグニッションを入れた際の標準設定となる。
ハイブリッド走行に切り替わっても、走行感覚は決して猛々しくない。ドイツの高級乗用車に乗っている感触だ。そこから、アクセルペダルをやや深く踏み込んでスポーツカーの顔をのぞかせてみた。
そうはいってもポルシェはポルシェ
パナメーラの上級車種として、550馬力のV型8気筒ガソリンターボエンジンと100kWのモーターを搭載することにより、最高速度が時速310キロという超高性能車であるから、装着されるタイヤは超偏平で接地幅が広い。ことに後輪用は、接地幅が32.5センチメートルもある。速度を上げていったとき、太いタイヤが路面に適切に密着し、直進安定性はもちろん、カーブにおいてもハンドル操作に対し的確な進路を定める抜群の安定性と安心をもたらした。
ドイツでは、速度無制限区間のあるアウトバーンで時速200キロ以上の速度を維持しながら、長距離移動をすることが日常的である。いくら高い速度が出せたとしても、そこに安定性に基づく安心が無ければ、とても長時間運転を続けることはできない。
ポルシェが、瞬間の速さを楽しむスポーツカーの魅力だけでなく、グランドツーリングカー(GT)として、高速での長距離移動を快適に提供するクルマであるという独自性を、このパナメーラPHVでも体感することができた。その上で、走行モードを切り替えると、その瞬間から勇ましい排気音を轟かせる演出も備えていた。
1年半後には、EVの「ミッションE」が日本にも導入される。それも、単なるEVスポーツではなく、ポルシェのEVであることを体感させてくれるだろう。そんな期待が高まった。