1948年6月8日に、ドイツでポルシェというスポーツカーが誕生してから70周年を祝う記者会見が開かれた。その舞台に飾られていたのは「356」でも「911」でもなく、次期型「カイエン」であった。この舞台設定に、スポーツカーメーカーにおける時代の変化を感じた。
スポーツカー以外の販売台数が増えるポルシェ
ポルシェの名を冠した最初のスポーツカーである「356」は、フェルディナント・ポルシェ博士の息子らが開発した。今日、ポルシェは「911」や「ボクスター」、「ケイマン」だけでなく、2002年に発売したSUVの「カイエン」や2009年の「パナメーラ」、そして2014年の「マカン」など、いわゆるスポーツカー以外の車種が大きく売り上げに貢献している。とはいえ、ひとつの節目となる70周年を代表する車種として、カイエンが主役となったことは何かを示唆するものといえた。
スポーツカーやGTカーといえば、何より速さと走行性能の高さが売りであり、従来は消費される燃料のエネルギー効率が顧みられることはあまりなかった。少なくとも、それらを愛用する顧客が燃費を意識することはほぼなかったといえるだろう。
だが、世界は今、環境問題が全てにおいて優先され、衣食住の全てにおいて効率が高く、無駄を省いた生活の実現に向かっている。移動手段としては、クルマはもとより鉄道やバスにおいても省エネルギーであることが求められる時代だ。スポーツカーやGTカーも、この流れと無関係ではいられない。
クルマの技術挑戦の場としても捉えられるモータースポーツの世界においても、燃料使用量の規制が1990年代から始まっていた。F1やル・マン24時間レースでは、スタートからゴールまでに使える燃料が制限されてきた。あるいは、減速時のエネルギー回生やハイブリッド(HV)技術がレーシングカーの動力に組み込まれたのである。
ポルシェの電動化も待ったなし
ポルシェも、すでにプラグインハイブリッド(PHV)車の販売をカイエンやパナメーラで始めており、今日、例えばパナメーラのEU域内での販売は、60%(2018年第1四半期)がPHVであるという。
2015年には、「ミッションE」と呼ぶEVを開発中であることを表明していたポルシェ。このクルマは2019年に欧州で発売する。七五三木(しめぎ)敏幸ポルシェ ジャパン社長は今回の記者会見で、ミッションEを2020年の早い時期に日本市場に導入すると公式に明らかにした。