しかも、そこに2つの要因が追い打ちをかけている。ひとつは、BYOD(Bring your own device)の動きだ。

スマホやタブレットを多くの人が所有し、これを機内に持ち込む人が増加。それによって、機内エンターテイメントの姿が変わろうとしている。自分のスマホで音楽を聴いたり、自分のタブレットで映像コンテンツを楽しんだり、ゲームをプレイしたりといった利用者が増え、これに伴い、航空会社のサービス内容も変わることになる。とくに国内線などに用いられる中型機などではその影響が大きいと見られている。

樋口社長は、「確かにBYODの流れはあるが、ワイドボディ機でのビルトインのニーズは根強く、あまり影響がないといえる」としながらも、「ここでは、機内でのインターネット接続が前提となり、あらゆるサービスが可能になる。スマホなどにWi-Fi接続をしたり、クラウドを活用したプレミアムコンテンツの提供のほか、新たな広告や幅広い機内ショッピングなども提供できる。従前のオンプレミス的なエンターテイメントから、クラウドベースのサービスや、搭乗者ごとにパーソナリゼーションしたサービスが可能になる。そして、4K対応といったことも始まってくることになる。これを1社で提供できるのはパナソニックだけであり、様々なニーズに対応するために投資を続けたい」とし、「業績は短期的には凸凹するが、長期的には成長させたい」と語る。

アビオニクス事業は、2020年度以降は成長軌道に戻ると予測しており、それまでに、アビオニクス事業のうち7割の売上げ構成比を占める機内エンターテイメントへの依存率を下げる一方、年率20%以上の売上げ成長を遂げながらも、現在は赤字となっているデジタルソリューション&サービス事業の黒字化、リカーリングビジネスとして安定的な収益を確保するには欠かせないリペア・メンテナンス事業の強化などが課題となる。

大型機の需要が回復するタイミングまでに、パナソニックのアビオニクス事業の体質改善を進める一方、ハード、通信、クラウドを組み合わせた統合型プラットォームの開発により、航空会社の付帯収入に向けた新たな提案や、サービスの多様化に向けた提案ができるかどうかが鍵になる。

アビオニクス事業に課せられた制裁金は?

もうひとつの要因は、アビオニクス事業における制裁金の支払いだ。

米司法省(DOJ)と米証券取引委員会(SEC)は、パナソニックと米国に本社を置くパナソニックアビオニクスに対し、連邦海外腐敗行為防止法およびその他の米国証券関連法に違反したとして、2億8060万ドル(約310億円)の制裁金を課し、2018年5月1日、その支払いに合意した。

これは、航空会社との特定の取引およびその取引に関連するエージェントやコンサルタントの起用に関する活動に問題があったとして、調査を受けていたもので、今後2年間は、第三者によるコンプライアンスに関するモニタリングを受け、その後1年間は、コンプライアンスに関する自主報告をDOJに対して行うことになる。

樋口社長は、「制裁金の支払いによる2017年度の連結業績への影響は、2017年度第3四半期までに引当て済みであり影響はない」としながらも、「パナソニックアビオニクスの経営陣を入れ替え、財務監査の専門家を採用することでコンプライアンスを強化。第三者のエージェントやコンサルタントも撤廃し、監督を徹底している。顧客をくまなく訪問し、信頼回復に向けて、当社の姿勢を理解してもらっている。従業員も前向きに仕事に取り組み始めたところだ」と説明する。

米パナソニックアビオニクスは、アビオニクス事業の本丸となる企業であるとともに、パナソニックが海外に事業部門の本社機能を置く先行事例としても、その取り組みが注視されていた。そこで起きた問題を、次の成長のバネに変えられるかが注目される。