業績をみれば、樋口氏が率いるコネクティッドソリューションズの初年度の通信簿は、評価されるものだといっていい。
2017年度業績は、売上高は前年比6.5%増の1兆1193億円、営業利益は17.8%増の1057億円。前身となるAVC社時代からみれば、2015年以来、2年ぶりの増収増益。営業利益率は9.4%と、パナソニックの4つのカンパニーのうち、唯一、2桁近い水準を達成している。
内部目標では、アビオニクス事業およびプロセスオートメーションを除く同社全体で、2018年度には営業利益率5%の達成を目指していたが、これも、1年前倒しで2017年度に達成したという。
樋口社長は、「これを組織の意識改革によるものと結論づけることは難しい」としながらも、「働き方改革が注目を集めるなかで、信頼性が高く、軽くて、薄くて、バッテリー駆動時間が長いと評価されるレッツノートが、前年比130%という成長を遂げたほか、iPhoneの発売にあわせて、プロセスオートメーションのビジネスが拡大するなど、追い風の要素もあった」とする。
新たなソリューション導入も成果
だが、その一方で、羽田空港に導入した顔認証ゲートを採用した入出国手続きソリューション、高輝度プロジェクターを活用したプロジェクションマッピングによる大型イベント向け空間演出ソリューション、北米警察向けに証拠映像をクラウドで管理する警察向け映像管理ソリューション、電子棚札などを活用して商品陳列や価格変更作業を効率化する小売り向け電子棚札ソリューションといった、新たなソリューション導入などの成果も見逃せない。
そして、これまでパナソニックが行ってこなかった「エンタープライズマーケティング」にも着手。関東圏を中心にしたテレビCMや、デジタルメディアでの訴求、展示会でのメッセージなどを、統一したトーン&マナーで展開したことで、ビジネス領域における認知度向上を果たしたことなども示してみせた。
だが、就任2年目は厳しい状況になりそうだ。2018年度は売上高で前年比1.6%減の1兆930億円、営業利益は19.9%減の830億円と減収減益を見込む。スポーツ界で言われる「2年目のジンクス」の様相ともいえる。
樋口社長は、減収減益の計画の理由をね「アビオニクスの大型機生産の減少の影響が大きい。アビオニクス事業を除くと増収増益になる」と説明。「できれば、アビオニクス事業の減益幅を減らし、アビオニクス事業を含めても増益を目指したい」と意気込む。
もともとコネクティッドソリューションズ社は、前身となるAVC社時代から、アビオニクス事業が収益と成長の柱となり、カンパニーを支えてきた経緯がある。だが、2019年度までは、パナソニックにとって収益性の高い大型機(ワイドボディ機)の生産、出荷サイクルの端境期に入り、同事業は減収減益の状態が続くことになる。カンパニー全体を牽引していた事業が、この数年は「お荷物」となるタイミングに入ってきているのだ。