Appleは最近、同社のユーザー数に関するデータを頻繁に発表するようになった。毎四半期ごとに必ず告知するわけではないため断片的ではあるが、世界で稼動するAppleのアクティブデバイスは10億台にも達しており、今回の四半期に発表された「購読」ユーザーは2億7000万人であることが明らかになった。
購読ユーザーには、Appleが提供するiCloudストレージプランやApple Musicなどのサービスが含まれるほか、アプリが月額、もしくは年間などの期間で有料サービスをApp Storeを通じて提供しているものも含まれる。
ちなみに、この購読ユーザーの数字が直近で明らかになっていたのは1四半期前で、当時は2億5000万人だった。つまり、四半期あたり2000万人のペースで増加したことが分かる。
また、音楽ストリーミングサービスのApple Musicは4800万人の有料購読ユーザーが報告されており、こちらも毎月200万人ずつの増加ペースを維持している。競合となるSpotifyは7500万人の購読者数であると発表されており、ユーザー数増加のペースはAppleが上回っている。
今後、Appleを襲う2つの飽和
前述の通り、サービス部門の成長は、iPhoneが戦うスマートフォン市場の世界的な縮小局面を迎える上で非常に重要だ。iPhoneの販売台数減少を高付加価値化によって売上減に結びつけないようにしたとしても、限度がある。iPhoneの売上減という1つめの飽和が本格的に始まるとき、サービス部門の売上高の成長がそれを補えるかどうかに注目が集まる。
一方で、App Storeや購読サービスが伸び続けるとは考えにくい。アプリに対する支出が我々の中で新たなものであり続けるわけではないからだ。そのため、日々生活する中で、購読するサービスが一定量そろえば、その人からの売上増加を望めなくなる。ここに、2つ目の飽和のポイントがある。
それらの飽和に備え、Appleが売上増加の新たな柱としているApple Payは、iPhoneの外の購買から手数料収入を得ようというアイディアだ。対応する国と店舗の拡大によって売上を伸ばしていくことができる。
また、前述したAppleのアクティブデバイスを増やすことは、アプリ購入や購読ユーザー増加にとって重要である。途上国でのiPhoneのシェア拡大が、Appleのサービス部門の成長に直結する重要な指標へと再び復帰することになるだろう。
アプリへの緩やかな移行
Apple Musicは米国で善戦しているが、実はこれは序の口だとみている。Appleは、生活に関わるコンテンツ全般について、Apple ID経由での購読を実現することを考えているようだ。2018年に入り、AppleはTextureというサービスを買収した。200もの雑誌が毎月10ドル(約1,100円)程度で読み放題になるサービスを提供してきたが、AppleはこれをApple Newsのサービスと融合させることになるだろう。
Googleは5月8日のGoogle I/O 2018の基調講演で、同社がこれまで提供してきたGoogle Newsをリニューアルし、Webのニュースとオンラインでの新聞購読を融合させた、信頼できる情報源によって構成された新しいニュース体験を提供すると発表した。
Facebookがプライバシー問題とともに追及を受けたテーマに、フェイクニュースの拡散やロシアなどによる世論操作があった。インパクトはあるが真偽が定かではない情報の拡散から身を守るには、上質な情報ソースを保護し、その情報を集約することが重要となる。
Facebookは、AI(人工知能)によるフェイクアカウントの排除やフェイクニュース、政治的なバイアスの判断などを行っているが、Googleは旧来の情報ソースをいかに生かすかという取り組みを見せた。AppleはGoogleに近く、より人の手を活用したニュース編集を行うことはApple Musicと同様だろうが、Textureの買収は情報ソースの収益化の手段とその手数料収入の確保を叶える一手といえる。