三菱電機もかつては、DRAM事業の売却や携帯電話端末事業からの撤退といった荒療治を行い、さらにはPC事業や洗濯機事業からも撤退した。最近では、粒子線治療システム事業を日立製作所に売却するといった動きもある。だが、強い領域に投資を続けながら、幅広い間口を持った戦略を維持し続けているのは三菱電機の大きな特徴だ。
杉山社長は、「これからも、将来の成長が見込めないものは整理していくことになるが、総合電機メーカーとしてのポジションは維持していく姿勢に変わりはない。三菱電機の特徴は、強い複数の事業群を持っていること。これによって、新たな事業展開につなげられる。家電事業も維持していくことになる」と述べた。
実は、中期経営計画の5兆円以上という連結売上げ目標のなかにも、M&Aの要素は含まれていない。もともと派手さはないが、過去最高の売上高、営業利益を達成したとはいえ、堅実な経営ぶりが先行し、どうしても「守り」の印象が強いことが否めない。
三菱電機は、4年サイクルで定期的に社長が交代し、着実に売上げ、利益を拡大。電機大手のなかでは、安定した営業利益率を確保している。これもなぜか、「守り」の印象につながってしまうから不思議だ。
杉山社長は、「メディアの方々にとっては、三菱電機の経営は全体的には面白くないと感じるのかもしれないが」としながら、「中期経営計画で掲げた売上高5兆円以上というのは、決してたやすい目標ではなく、個々の事業において、しっかりと利益を伴った成長をしてなくはならない」と語る。そして、「さらに大切なのは、2020年度以降も成長していけるかどうかである」とする。
2020年度以降の指針については、「2020年度の方向が見えた段階で公表するが、いまから、ネタを仕込み、成長の枠組みを作らなければならないと考えている。組織のあり方や、研究開発の力をどこに注ぐのかといったことも考えていく」とする。
EV市場拡大の時期を捉える
そして、2020年度以降の成長において、懸念事項としてあげたのが、「EV(電気自動車)が立ち上がる時期に、しっかりとそれを捉えることができるかどうか。それにあわせて、パワー半導体などの製造ラインにどう大きな投資をしていけるのかが重要である。もし、そのタイミングを見誤って、遅い投資になれば、当然、大きな機会損失を生む。EVの市場拡大は、機会でもあるが、リスクでもある」とする。
ここでは、自動運転の本格到来などを見込んで、部門横断型で事業を創出するための組織を2018年度中に新設する考えも明らかにした。
杉山社長の任期も4年だとすれば、2020年度の中期経営計画を超え、EV時代を見据えた大きな成長機会を捉えた次の一手までを担うことになる。言い換えれば、いよいよ「守り」から「攻め」への転換を担うことになるのは明らかだ。