運転手の異常を検知し、車両を路肩に寄せる技術
日野は大型観光バス「日野セレガ」に「ドライバー異常時対応システム」(EDSS:Emergency Driving Stop System)を搭載し、この夏に発売する。同システムを商品化するのは商用車として世界初の事例となる。
高速バスで運転手の健康状態が急変したことによる事故が多発したことは記憶に新しい。こういった事故を防ぐべく、日野はセレガにEDSSを導入する。EDSSの概要だが、これはクルマの非常停止ボタンのようなものだ。具合が悪くなったドライバー自身、あるいは添乗員などが緊急時、運転席のボタンを押す。ボタンは客席上部にも設置されていて、異変に気づいた乗客も押すことができる。
運転席のボタンを押すと、バスは徐々に速度を落とし停車する。この時、車内では非常事態を知らせる赤色のランプが点滅し、警報ブザーが鳴る。周囲(車外)に対してはホーンを断続的に鳴らし、ストップランプとハザードランプを点滅させて異状を知らせる。
客席ボタンの場合は、車内への報知と緩やかな減速はすぐに始まるが、本格的なシステム作動までには3.2秒の猶予が設けてある。これは乗客が誤って操作した場合やいたずらの可能性を考慮した措置だ。
EDSSは非常停止ボタンとしての側面が強く、自動運転につながる技術という印象は薄かったのだが、この先の技術として日野は、ドライバーの異常を自動で検知し、周囲の状況を確認して路肩へと車両を退避させるシステムの実現を念頭に置く。走行中の車線でバスが停止すれば追突などの事故を誘発する可能性もありそうだが、路肩に自動で非難できるようになれば安全性はかなり向上するはずだ。
トラック隊列走行の完成度は
羽村工場ではこの他、商用車の衝突被害軽減ブレーキ(PCS:Pre-Crash Safety、いわゆる自動ブレーキ)を体感できた。この機能は路線バスをのぞく全ての車種ですでに標準装備としているそうだ。
また、トラックの隊列走行についても、日野はかなり進んだ技術を持っている様子だった。先頭のトラックだけが有人の運転で、後に続くトラックが無人で前車を追尾する機能が実用化となれば、当然ながらドライバーの人手不足対策になるし、運べる荷物の量も増えそう。この技術のデモでは、後続車にドライバーは乗っているものの、ステアリングとペダルを操作せずに先行車を追尾し、レーンチェンジまでこなす様子を確認することができた。
バスの技術としては、自動運転でバス停にピタリと寄せる「プラットホーム正着制御」という技術も体感できた。これは路面上の誘導線をバスのフロントガラス上部に取り付けたカメラで認識し、自動操舵と自動減速を行うことにより、バス停にギリギリのところまで寄せられる技術。バス停と低床バスの出入り口の高さが合っていれば、車椅子でも簡単に乗り降りできるというのが同技術の利点だ。