下手な"しゃべり"に学ぶこと
──松之丞さんは、ご自身の勉強のために、誰かの話を聞きにいったりしますか?
人の高座はよく聞きますけど、それ以外だと、昔からラジオが好きでずっと聴いていますね。もちろん高座の話し方とは全然違うけれど、常に誰かのしゃべりを耳に入れるようにはしています。そうすると、なんか自然に自分の口から出るようになるんですよね。
──どんな人のラジオを聴いているんですか?
伊集院光さんが大好きなんで、よく聴きます。あとは、アイドルのラジオとか、なんでも聴きますよ。しゃべりが上手い人と下手な人の話をまんべんなく聴いています。そして、しゃべりが下手な人の話を「なんで下手なのか?」と分析する。例えば、「あ、オチを先に言ったな」「この子慣れてないな」「緊張してるな」とか。
──上手な人の話ではなく、下手な人の話を活用するんですね。
上手な人から吸収できることって、意外と少ないんです。それより、下手だと思う人が、なんで下手なのか、どこがダメなのかを分析して反面教師にする。
高座の場合は、しゃべり始めて最初の10秒以内に笑いをとらないとお客をつかみにくいと言われているのですが、「その10秒にこの人は何をもってくるか?」ということを意識して聴いたり、「あー、ここで噛んでる」「話の組み立てが悪いなあ」とか、分析するんです。
あとは単純に、自分の前の演者が高座に上がっている時、ダジャレはウケるけど変化球には反応しないとか、お客の反応をみて自分の出番に活かすこともできますしね。
自分を俯瞰でみる練習とは?
──相手に伝わるスピーチやプレゼンをするために、誰でも実践できる練習方法などはありますか?
もうみんなしていることかもしれませんけど、自分のスピーチを録音して客観的にきいてみる。そうすると、「俺、こんな早口でここ話してたの? これじゃ伝わんないな~」とか、発見がたくさんありますよ。もう少し時間があるなら、それをもう1度、文字起こししてみる。すると、いかに構成が悪いか、無駄が多いかが視覚でわかる。
──スマホにも録音機能はついているので、誰でも気軽に試せそうですね!
最初は、録音した自分の声を聴くことにも結構抵抗があると思うんです。自分が普段聴いている声と違いますから。でも、ある日を境に自分の声に慣れる。それは成長だと思います。そこを乗り越えれば、今度は自分の声を音として捉えて、「(聞き手は)今、こんな感じで聴いてるんだろうな~」とイメージできるようになります。自分で聴いている音と人が聴いている音を区別して構成を組んだり、話したりできるようになりますよ。
自分のことを俯瞰でみるための地味な作業ですが、こんな作業こそを努力と言うんじゃないでしょうか。