まだまだ世界には乗るべき飛行機がたくさん
古庄氏: 「世界中のいろいろな飛行機を撮っているので、今度はそれでギネス記録とれないかなって思っているんですよ。多分それだと、機体番号とかいろいろな制約があるんだろうな。ギネス記録の申請には、フライトログとかいろいろとまとめないといけない。前は申請するのに半年ぐらいかかったので、ちょっと今はできないですね。60過ぎたらやるかなって。撮っている数が膨大なので、日本で一番いろいろな飛行機を撮っているという自負はありますし、それこそ、写真を貸してほしいという要望もたくさんあります」
松永: 「世界中の航空会社を乗り尽くした感はありますか」
古庄氏: 「これ(『チャーリィ古庄の世界の旅客機捕獲標本』イカロス・ムック)は私が出した本ですが、2年に1回、内容を更新して出版されています。掲載している航空会社の内、1割は吸収合併とか倒産とかで消えてなくなって、また1割は新しく誕生しています。ミャンマーとかカンボジアとかで、まだまだ新しい会社がバンバン出ていて、明日もそのカンボジアの新しい航空会社に乗りに行くんですよ」
松永: 「航空写真家になりたいと思っている人に、何かアドバイスをするとしたらどんなことですか」
古庄氏: 「写真教室なんかで、『私もカメラマンになりたいです』と話してくれる人もたくさんいるけど、よっぽど好きでないとできない仕事だと思います。よく言われるんですよ、『好きなものを撮ってそれで仕事ができるっていいですよね』って。でも、それだけではないじゃないですか。
私の場合、会社勤めをしていたから良かったな。細かい話ですけど、見積書や企画書の作り方とか、言ってしまえば名刺の渡し方など、そうしたビジネススキルは一通り身につけておくことが、やっぱりカメラマンにも欠かせないです。会社で鍛えられたから今があるというか。学生からそのままカメラマンになっていたら、生意気なままだったんじゃないかな(笑)。私の場合、航空会社時代のコネクションとか、自分で飛行機を飛ばせるということが生きていると思います。
正直、今はカメラの性能がいいので、ある程度の写真は誰でも撮れるんですよ。でも、それで食べていけるかどうかは別問題ですよね。空撮などでは管制棟に行って、ヘリ会社の人と管制官と話をするわけですが、パイロットライセンスがあるからそこまで話せるし、同じ航空地図を見ても、向こうも『この人、分かっているんだな』とちゃんと話を聞いてくれるし。そういうバックグラウンドがないとできないことも多いですね」
カメラマン以外の仕事を選ぶなら?
松永: 「航空写真家の醍醐味はどんなことだと感じていますか」
古庄氏: 「私の場合、いろいろな航空会社の飛行機に乗って、その違いを感じられるのが楽しいですね。今は100を越える国や地域に行っていますが、それぞれの国の特色を実感できて、普通のサラリーマンをしていたらできなかっただろうなって思っています。カメラマンだと必ずしも行きたいところばかりではないけど、それも含めて貴重な体験ですよね」
松永: 「改めて仕事を選ぶことになっても、やっぱりカメラマンを選ぶと思いますか」
古庄氏: 「そうですね。他の仕事だったら、ヘリのパイロットとか面白そうだなと思いますね。私はヘリのライセンスは持っていないんですけど、同期や後輩なんかにもヘリで飛んでいる人がいて、ヘリのパイロットは景色を見ながら自由に飛べるからいいなと思いますね。暑いし寒いし肉体労働ですけど、面白そうだなって」
松永: 「最後に、今更な質問をしてもいいでしょうか(笑)。失礼ながら、勝手に『チャーリィさん』とお呼びしていたのですが、この"チャーリィ"の由来はなんでしょうか」
古庄氏: 「チャーリィはアメリカにいた時につけられたミドルネームです。コンチネンタルの時も、男性の8割はミドルネームがついていました。会社のIDもミドルネーム。逆に、漢字を使わない。ティムやテックスという人が多かったですね。僕のチャーリィは勝手につけられました(笑)。本名は隆治なんですけど、海外の人からするとリュウジって呼びにくいんですよね」