また、津賀社長は、「テスラは、ひとことでいえば、とにかくスピード優先の会社。我々の場合は、少しマージンを見て計画を立てたり、実行が確実な計画を立てたりするが、テスラの場合は、とにかくチャレンジ、チャレンジ、チャレンジの会社である。最初から理想を追い求める会社であり、我々とは異質の会社である」と表現。「だが、そこにチャレンジし、高い目標を立てることで、やる気を出して、結果を出していくことができる。いまは、当初計画よりは少しずれてはいるが、大きな目で見ればスピード感がある立ち上げをするメーカーである。呼吸をあわせてついていくのは難しい面もあるが、だいぶ慣れてきた。一緒に頑張るパートナーである」とも述べた。

だが、振り返ってみれば、パナソニックは、2010年度の増収増益後には、総額で6000億円を投資したともいわれるプラズマディスプレイの工場を閉鎖。プラズマディスプレイ事業からの撤退を発表し、それが、その後の業績悪化の元凶となった。これが、実質的な増収増益へと転換したいま、テスラへの投資がだぶって見えるともいえる。

この点について、津賀社長は、「これまでにない電池の使用量を考えれば、電池の生産に対して、多くの生産投資することは、各社に共通して自然なことである」とながら、「液晶パネルの投資を例に挙げると、一度投資をすると、そこでパネルの性能が決まってしまうという側面がある。一方で、バッテリーは設備投資の金額が液晶パネルよりもずっと小さい。売上げに対して10%程度の減価償却で済む。また、電池の大きな要素は、電池の中身の化学的要素で差別化したり、エネルギー密度をいかにあげるかといった点であり、この部分は設備投資には寄らないものである。テスラ向けの電池でも、当初の設備を使って、どんどん容量の高い電池を生産できるようになる。つまり、設備投資をしたから競争力があがるというものではない。その点も電池事業の特徴である」とした。

創業100年のパナソニックある懸念

だが、パナソニックの成長戦略を見る上でテスラの動きは外すことができないのは明らかだ。

一方で、コネクティッドソリューションズは、機内エンターテインメント事業が、大型航空機の需要減少に伴い、アビオニクスが悪化することにより、減収減益となる見通しだ。これも懸念材料のひとつといえる。

パナソニックの津賀社長は、「コネクティッドソリューションズに占めるアビオニクスの利益部分は大きい。だが、アビオニクス事業は、需要の山と谷が激しい市場である。大型航空機のアビオニクスに関する需要は、2018年度および2019年度に谷を迎えるが、2020年以降復活することになると予想している。長期的にはビデオ・オン・デマンドの市場は成熟しているが、ネットワーク接続などのデジタルサービスが伸びしろになる。ここで、当社がどんな位置づけを取れるのかが重要であり、そこに開発リソースをシフトしている」と発言。パナソニックの梅田常務執行役員は、「中期的には、デジタルサービスやリペア、メンテナンス事業を強化し、安定成長を目指している」とする。

米国子会社であるパナソニック アビオニクスが、米国証券取引委員会および米国司法省から、連邦海外腐敗行為防止法およびその他の米国証券関連法に基づき、航空会社との特定の取引およびその取引に関連するエージェントやコンサルタントの起用に関する活動について調査を受けていたが、このほど、2億8060万ドルの制裁金を支払うことで合意した。今後2年間、第三者によるコンプライアンスに関するモニタリングを受けること、その後、1年間にわたって、コンプライアンスに関する自主報告を行うなど、体質改善に挑む必要もある。

こうしてみると、「持続的成長」へとシフトしたとするパナソニックだが、いくつかの懸念材料があるのも事実だ。今年、創業100周年を迎えたパナソニックだが、最近、津賀社長は、「100周年」という言葉を、自ら積極的には使わなくなったという。すでに、101年目以降の成長に目を向けているようだ。