巨大な市場で売れる大きなクルマ

「ラージ」と「スモール」を端的に言えば、米国・中国市場向けと、日本を含むそれ以外の市場向けということができるだろう。もちろん、「CX-5」などは重なる車種になるかもしれない。

  • マツダ決算のスライド

    スモール商品群は「CX-3」や「新型CX」(トヨタとの米国合弁工場で作る新しいクルマ)などを中心に120万台規模、ラージ商品群は「CX-5」を中心に「CX-8」「CX-9」を加えて80万台規模、合わせて200万台規模を目指すとマツダは説明する

世界の自動車メーカーが主力と考える米国は、極端にいえば大きなクルマしか売れない市場だ。その結果、世界の自動車メーカーから発売される新車は年々、車体寸法が大きくなっている。例えばドイツ車のアウディでは、「A4」と「A6」の見分けが単独ではつきにくいほどだ。

車体が大きくなれば取り回しが悪くなり、車庫の出し入れに手間がかかり、日本市場では使いにくくなる。一方、道幅が日本と同じくらい狭い欧州では、路上駐車が当たり前なので、車庫入れに手間取るといった不便はそこまで感じないのかもしれない。

日本で軽自動車の人気が高まり、市場の40%近くを占めるようになったのは、単に税金や高速道路料金が安いといった経済性だけが理由なのではない。現在の軽自動車規格の車体寸法が、1960年代の初代トヨタ「カローラ」や日産「サニー」に近く、国内の道路・交通事情に最適なサイズだからである。経済性重視だけが理由であるなら、200万円近い軽自動車が売れるはずもない。

米・中と国内の二正面作戦に限界か

北米を強化し、同時に中国にも力を注ぐ上で、より大柄な車種開発に力を注がなければならないと考えたとき、国内市場も視野に入れながらのコモンアーキテクチャーでは、なかなか開発が難しいだろう。それは単に、車体の大小だけの問題ではない。大型化によって生ずる重量増に対し、環境性能(燃費)と動力性能をどのように両立していくかという面でも、1つの理想的な構想から目標を達成していくことはチャレンジングであるはずだ。

  • マツダ新世代商品群のクルマ

    コモンアーキテクチャーで大小さまざまなクルマを作り分けてきたマツダだが、200万台体制を目指すには2つのアーキテクチャーが必要と判断したのだろうか

一気にクルマの電動化を進め、例えば全車種を電気自動車(EV)にしていくなら、コモンアーキテクチャーでも対応可能かもしれない。だが、マツダは将来的な電動化を視野に入れながら、世界初のHCCI(予混合圧縮着火)技術を実用化し、今年の発売を予定する「SKYACTIV‐X」など、エンジン主体の動力を優先する。したがって、仕向け市場に応じた、すなわち車体の大小に応じた動力のすみ分けも必須となる。

スモールとラージの区別は、プラットフォームを含む車体の大小だけでなく、パワートレーン(動力)の選択においても必要になるだろう。