従量制課金に対応したOneDriveクライアント
続いてOneDriveクライアントの変化を紹介する。機能更新プログラムと歩みを共にしていないものの、過去にはファイルオンデマンドなど、機能更新プログラムリリースを境に大きな変革を行ってきた。Windows 10 バージョン1803における新機能は従量制課金ネットワークへの対応だ。
以前のOneDriveクライアントは、ネットワーク接続を検知するとMicrosoftアカウントやAzure ADアカウントへのサインインを行い、クラウドストレージとローカルストレージの差異を検知すると、ファイルの同期を行っている。だが、新たなクライアントをインストールした環境では、サインイン後にネットワーク接続の設定をチェックし、従量制課金設定が有効な場合は一時停止処理を行う。
これまで実装されなかったのが不思議なくらいだが、見方を変えれば「ようやく使い物になった」と言える。筆者が確認した限りでは、当初から従量制課金接続のスイッチがオンに限定しているLTE接続でも、同じ動作を行う仕組みだった。
アプリに応じて使用するGPUが選択可能へ
細かい部分ではローカルアカウントによるパスワード復元のサポートも新機能だが、本稿ではグラフィックパフォーマンスに関する設定に注目したい。Windows 10 バージョン1803では、アプリケーション単位でGPUリソースの割り当てとして<システムの既定><省電力><高パフォーマンス>のいずれかを選択できる。
ここで選択できるアプリケーションはクラシックアプリ(デスクトップアプリ)、UWP(ユニバーサルWindowsプラットフォーム)アプリケーションの両方が対象。例えばフォトレタッチアプリケーションは高パフォーマンスを選択し、普段から使うアプリケーションはシステム既定や省電力を選択することで、バッテリー駆動時間を延ばせるという。
ただし、大多数のPCで本機能は意味をなさない。上図で注目してほしいのが「GPUの省電力」「高パフォーマンスGPU」と書かれた部分だ。Surface Bookのように複数のGPUを供えた環境では異なるGPU名が並び、アプリケーションに応じて使用するGPUを選択可能になる。
本機能については機材を調達できず検証不足だが、貴重なバッテリー駆動時間を延長する手法としては実に興味深い。
今後も安定性と新機能の実装を共に進めるWindows 10
最後にRedstone 5以降の動きを簡単に紹介したい。その開発コード名も海外のニュースサイトでは、Redstone 5(RS5)が最後になるという噂がある。Windows Centralが報じた内容によれば、2018年秋頃リリース予定のRS5はそのままだが、2019年春頃は「19H1」になるそうだ。
命名法は上2桁が年を意味し、下2桁がリリース回数を指す。現在Windows 10は年2回の機能更新プログラムをリリースするスケジュールだが、仮に2019年は年3回リリースした場合は「19H3」となる。この命名法は上2桁が年、下2桁が月を意味するWindows 10のバージョン表記と類似するため、採用する可能性は否定できない。個人的には味気なさを感じる開発コード名だが、MicrosoftのWindows 10開発者が分かりやすいのあれば致し方ないだろう。
さて、本来Windows 10 バージョン1803に実装予定だった「Sets」はRS5に繰り越された。総じて見ると本バージョンは改変箇所は多いものの、ハイライト的新機能は皆無である。これはWindows 10自身の完成度が高まったことを意味しているのだろう。
Windows 10 バージョン1507など初期バージョンで頻繁に発生していたスタートメニューや「設定」が落ちる場面も減り、UWPアプリケーションも完全ではないが安定性を感じるようになった。RS5もこの方向性を引き継ぐと思うが、2018年5月7~9日(現地日時)で出てくる話題によって、今後の方向性が示される。
阿久津良和(Cactus)