NEV規制とは何か
中国政府は2019年から、PHV、EV、燃料電池自動車(FCV)を一定比率生産・販売することをメーカーに義務付ける「NEV規制」を導入する。これに対応できないメーカーは、対応済みの競合メーカーの余剰分を「クレジット」として買い入れないと、ガソリン車の生産にも制限を受けることになる。
中国のNEVには、日本で人気のハイブリッド車(HV)が含まれないことから、日本車メーカーにとって中国でのNEV規制対応が急務となっている。中国市場は今や3,000万台に迫る圧倒的な世界最大市場。加えて、2017年に売れた計142万台のEVおよびPHVのうち、中国は5割強を占めてNEV市場でも先行している。
中国政府は2019年からのNEV規制実施に加えて、自動車産業の外資規制を撤廃する方針も打ち出した。これは従来、中国で自動車メーカーを設立する場合、外資に対して出資上限を50%以下に定めていたものを、2022年までに全廃するものだ。まずは2018年中にNEV分野に関する制限を撤廃する。
この決定の背景には、国を挙げたEV振興策により、中国メーカーが世界を主導するEV強国としての地歩を固めようという狙いがありそうだ。
欧州勢も中国市場攻略に躍起
一方で、この世界最大市場で存在感を高めたい日・米・欧・韓の自動車各社は、NEV規制対応による販売拡大に意欲を示す。中国市場における日本勢の販売台数は日産、ホンダ、トヨタの順だが、その差は拮抗。2017年の中国市場で各社の勢力図を確認すると、首位はVW、2位がGMで、これを追う中国現地メーカーに日産、ホンダ、トヨタも混ざる構図となっている。
中国市場における電動車の販売台数は増えていく見通しで、2025年には2017年の10倍に近い700万台市場に成長するとの予測もある。この商機を求めて、日本車大手、海外大手、中国勢にEVベンチャーが加わった先手争いが激化しているのだ。
EVシフトで先行する欧州メーカーも、中国での生産・開発を強化している。中国でトップのVWは、2021年までに中国の6工場でEVなど電動車の生産を始める予定。同国では2022年までに、電動化やコネクテッド技術などに対する150億ユーロ(約2兆円)の投資を実施する方針も発表している。BMWはEVやPHVの「iシリーズ」からSUVの「iX3」を初公開し、2020年に中国で世界に先行して投入する計画だ。
中国・吉利集団の傘下企業となったスウェーデンのボルボも、2025年までに販売台数の半分をEVにすると発表している。モーターショーに「モデル3」を出展したテスラも、外資規制撤廃の波に乗って中国でのEV生産を実現する意向を強めているようだ。