Apple Watchが次のiPhoneの価値や体験を作る、という傾向が今後も続いていくかどうかは分からない。iPhoneも昨年から大きな変化を遂げている一方で、リーク情報によると、iOSの次期バージョンは機能拡張よりも、安定性や速度など、非常に基礎的なブラッシュアップに注力すると言われている。
また、当面の間、iPhoneには有機ELディスプレイを備えホームボタンを廃止したiPhone Xの流れと、液晶ディスプレイとホームボタンを備えたこれまでのモデルの流れが共存することになる。その状況下では、常にディスプレイに情報を表示する仕組みは、その箇所のみ点灯できる有機ELディスプレイでは有効だが、全画面のバックライトを点灯させる必要がある液晶ディスプレイでは、すぐに電池がなくなってしまい、現実的ではない。
しかしながら、iPhoneでサードパーティーアプリも含めたSiriフェイスを実現すれば、Apple Watch以上により多くの事柄を先読みし、通知を自動的に整理したり、そのとき必要な情報を差し出せる仕組みができあがる(残念ながら、Siriのプラットホームそのものが、サードバーティーの機能を大きく取り込むほどの余力がないとも囁かれて入るのだが)。
Googleの人工知能や機械学習の発達速度に追いつくには、Appleはアドバンテージのあるフィールド、つまり充実するアプリ開発者コミュニティによる用途の発見と、実用的な機能の実装を武器にしていかなければならない。
そのためのインターフェイス上、そしてプラットホームとしての受け皿を、いかに早く実現できるかが、競争の鍵となる。2018年6月にWWDC 2018が開催される。その場でどのような進化の方向性を示せるか、注目したいところだ。
松村太郎(まつむらたろう)
1980年生まれ・米国カリフォルニア州バークレー在住のジャーナリスト・著者。慶應義塾大学政策・メディア研究科修士課程修了。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)、キャスタリア株式会社取締役研究責任者、ビジネス・ブレークスルー大学講師。近著に「LinkedInスタートブック」(日経BP刊)、「スマートフォン新時代」(NTT出版刊)、「ソーシャルラーニング入門」(日経BP刊)など。ウェブサイトはこちら / Twitter @taromatsumura