Apple WatchがApple製品の体験の実験場とするアプローチは、所作と直結するデバイスから新しい体験を創り出していくという点で、利にかなっている。
そこで、Apple Watchにあって、iPhoneにないインターフェイスは何か?と考えるのは、次のiPhoneに搭載されうる体験やデザインを想像することとイコールであると言って良い。もしApple Watchを気に入って使っているなら、その気に入っている部分は、将来のiPhoneに対する「要求」に近いものに転換されているのかもしれない。
Apple Watchにあって、iPhoneにないものに「コンプリケーションズ」と「Siriフェイス」がある。
コンプリケーションズとは、Watchアプリが取得する情報を、非常に小さなパーツで表示し、カスタマイズ可能な文字盤の一部に配置できる機能だ。実際のアナログ時計では、多くの場合、文字盤に日付が表示される窓が開けられているが、Apple Watchではこの部分をカスタマイズできる仕組みだ。全てのWatchアプリがコンプリケーションズを持っているわけではないが、よく確認したい天気や気温、世界時計、アクティビティリングなどの情報を配置したり、アプリを素早く起動するためのショートカットとしての利用も可だ。
現在のiPhoneのホーム画面には、スライドさせることでウィジェットを配置可能で、アプリの情報をApple Watch以上の詳しさで確認できる。ただ、Apple Watchのコンセプトである「一目で」というわけにはいかない。有機ELディスプレイが前提となり、時計などの最小限の表示を、低消費電力で実現可能になれば、カスタマイズが行えるコンプリケーションズに対応するホーム画面を、ウィジェットの拡張とするのは、新しいスマートな体験を生み出すのではないだろうか。
もう1つのSiriフェイスの話に移ろう。Apple Watchには、Siriが集めた情報を適時表示する仕組みを活用した文字盤がある。通知のようなカードが時系列に並べられており、デジタルクラウンを回すと次々にめくっていけるようになっている。
もう少し詳しく「時系列」について説明すると、何も操作しない状態では今必要な2枚のカードが表示される。これもダイナミックに変化する。直近のスケジュールやリマインダー、気象情報、日の入り、セットしているタイマーの残り時間が表れるといった具合に。しかも、これらのカードの選択も、状況に応じて適切に行われる。例えば、いま14時半で、15時台に今自分がいる場所に雨の予報があると、選ばれる2枚のカードの先頭には、地名と雨の天気マークが表示されるのだ。そしてデジタルクラウンを回すと、その後Siriフェイスが用意しようとしていたカードを次々にめくっていける。対応しているのは、まだ公式アプリばかりだが、見るだけで情報が得られるコンプリケーションズの役割を大いに拡張している機能だと言えるだろう。