それぞれに違うセルの劣化状況
大量の中古バッテリーを製品化するため、フォーアールエナジーは使用済みリチウムイオンバッテリーの品質検査技術を構築してきた。
「リーフには、搭載される1パックのバッテリーに48のモジュールが収められています。このバッテリーパックの中で、一つ一つのモジュールがバラバラの性能に劣化しています。それらを一つ一つ確認し、性能の高いものから順に3つのグレードに分け、それぞれ用途に合った使い方に適用していきます」
「そのためには、まずそれぞれのバッテリーセルの劣化状況を確認することから作業が始まります。1モジュールの性能を充放電しながら検査するのに従来は8時間かかっていました。それではリーフ1台分の48モジュール全ての検査を終えるまでに16日掛かってしまいます。これでは次々に持ち込まれる中古バッテリーの検査が追いつきません。そこで弊社では、1モジュールにつき約4時間で検査を済ませ、性能を把握できるようにしました。これで初めて、中古バッテリーの事業が動き出せます」
「加えて、中古バッテリーが3つのレベル別にそれぞれ、例えば5年後にはどれくらいの容量、出力、充放電性能を保持しているか、温度差など使用環境の変化も加味しながら、将来の性能を推定するツールの開発も行いました。この2つの柱となる技術ができあがったことで、初めて中古バッテリーの事業を開始できたのです。これには日産の支援が欠かせませんでしたし、世界を走る全てのリーフのバッテリー情報がビッグデータ化され、確認できる状況にあることも不可欠です」
8年近い歳月をかけバッテリー再利用に道筋
3グレードに分類された中古バッテリーの内、最も性能のよい製品はリーフの交換用再生電池として販売される。中程度のグレードは、フォークリフトなどで利用される。グレードの低いバッテリーは、工場における電源のバックアップ用などで再利用の道がある。
「2010年の創業から8年近くの歳月をかけ、ようやく弊社の主力事業であるEVで使用済みになったリチウムイオンバッテリーの再利用と再販売に至りました。この事業は、そう簡単に誰にでもできるものではありません」と、牧野氏は感慨深げに語る。
様々な試行錯誤を積み重ねながら、使用済みEV用リチウムイオンバッテリーの再利用と事業化に向けた取り組みを進めてきたフォーアールエナジー。「EVシフト」との言葉も聞かれるようになった今、2018年3月には福島県の浪江町に新工場も開所し、いよいよ同社のビジネスは軌道に乗りそうに見える。今後の展開について牧野氏は何を思うのか。そのあたりは後編でお伝えしたい。