バイク乗りに厳しい日本の現状

バイクのユーザー離れはクルマ以上に厳しいと前に書いた。それは、クルマ以上に理由がたくさんあるからだ。筆者が考えるだけでも「3ない運動」「原付1種(50cc以下の第1種原動機付自転車)の道路交通法厳格化」「電動アシスト自転車の登場」「駐車取り締まりの激化」と4つが思い浮かぶ。

3ない運動は1970年代以降、事故減少や暴走族撲滅を狙って多くの高校で実施していた校則で、「免許を取らない」「買わない」「乗らない」という内容だった。二輪免許の取得可能年齢は16歳以上だが、これにより、事実上は四輪車と同じ18歳以上になり、バイクを体験しない人が多くなった。

  • 東京モーターサイクルショーの親子体験会場(開場前)

    若いうちにバイクを体験しづらい状況が日本にはある

原付1種は1986年、ヘルメットの着用と多くの交差点での2段階右折、つまり自転車と同じような右折方法が義務付けられた。ヘルメット着用は安全性を考えれば理解できるが、2段階右折は交差点通過に時間を要することになり、不便に感じた。

そして1993年になると、ヤマハ発動機が世界で初めて電動アシスト自転車を発売。時速24キロまでモーターがアシストすることにより得られる性能は、制限速度が時速30キロに据え置かれた原付1種と大差なく、しかもヘルメットなしで気軽に乗れることから、かなりのユーザーが移行した。

  • ホンダ「モンキー125」

    電動アシスト自転車の登場は原付1種にとって脅威だった(画像は本田技研工業「モンキー125」)

さらに21世紀になると、それまで路肩や歩道に気軽に停めていた車両を、警察庁が駐車違反として厳格に取り締まることになった。しかし当時、二輪車用の公共駐車場は皆無に近い状況。目的地でバイクを停められないとあっては乗ろうという気持ちにならず、バイクを手放す人が増えた。

世界で二輪車の売上高がもっとも大きいのは本田技研工業(ホンダ)であり、2位はヤマハだ。つまり、日本は産業面では二輪王国なのに、利用面ではむしろ冷遇に近い状況なのである。