以前、クアオルトについての概要を伝えたが、実際にどのようなものなのかは体験していなかった。だが、クアオルトの先進自治体といわれる山形県・上山市から体験の案内をいただいたので、試してきた。
まず、クアオルトだが、ドイツ語で“治療・療養・保養のための滞在”を表す「クア」と、“場所・地域”を意味する「オルト」を組み合わせた言葉だ。つまり、健康増進や保養のために滞在する地域を表す。クアオルトはドイツで発祥し、10年ほど前から日本でも実施されるようになった。現在は大分県・由布市、和歌山県・田辺市、山形県・上山市、石川県・珠州市、新潟県・妙高市、島根県・太田市、秋田県・三種町、群馬県・みなかみ町、兵庫県・多可町などで取り組まれている。
温泉町・城下町・宿場町の顔を持つ上山市
その中でも、もっとも先進的といわれているのが、山形県・上山市だ。同市は開湯から約560年を誇る温泉街。それだけでなく、津軽地方や蝦夷貿易の拠点となった酒田港と江戸を結ぶ羽州街道の宿場町、清和源氏である土岐氏の城下町として栄えた。これほど多様な顔を持つ街はそうそうない。
そして、上山市はクアオルトと相性がよい土地柄だ。まず、前述したとおり、伝統のある温泉街であること。健康増進を考えた際、良質な温泉は必須だろう。そして、農畜産物生産量が高いという利点がある。健康を考えた場合、温泉そして食品は基本となる。さらに、里山にアプローチしやすいというメリットが大きい。
クアオルトでは気候性地形療法が採られる。これは、予防医学や健康増進のために行われる健康づくりの取り組みで、「無理なく歩く」というのが大きな柱となっている。本格的な登山ではなく、自分に合ったペースで歩くには、里山のような地形が最適なのだ。ちなみに上山市には、クアオルトの本場、ドイツ・ミュンヒェン大学から認定された気候性地形療法コースが8コースある。