Apple Pencilは日本では10,800円で販売されている。iPad(第6世代)にしてもiPad Proにしても、Apple Pencilを利用したければ予算をもう1万円ほど追加しなければならない。

例えば、30人のクラス向けにApple Pencilを用意しようとすると、アカデミック向けの割引価格で9,800円になったとしても、その負担の大きさはそれほど変わらない。そこで、Logitech製のスタイラスペン「Logitech Crayon」を、教育機関向けに1本49.99ドル(10本以上のオーダーが前提)と半額で用意した。Appleの教育機関向けチャネルを通じて販売するという。

  • Logitech製のスタイラスペン「Logitech Crayon」

Logitech Crayonは、Bluetoothでのペアリングを用いない製品で、授業の準備の際に教室での混乱を最小限に抑えることができそうだ。Apple Pencilのように筆圧検出はできないが、傾きが検出でき、画面に置いた手首を無視してくれる機能も備わる。

  • Logitech Crayonは傾きも検出できる

Logitech Crayonの充電は、ペンにLightning端子を差し込む方式で、iPadの充電器をそのまま利用できる。連続使用は8時間で、30分間操作がないと自動的に電源が切れる機能も備わる。Bluetoothを用いないペアリング方式である関係で、現在利用できるのはiPad(第6世代)のみとなっており、iPad Proでは利用できない。

ペン体験とARを教室に

iPadのペン対応とともに、Appleは主要アプリをペン対応とした。ドキュメント作成のPages、表計算のNumbers、プレゼンテーション作成のKeynoteという3種類のiWorkアプリにおいて、ペンを用いた手描きによる注釈付けや、完全に白紙からの手描きが行える。特に、Keynoteは手描きだけでスライドを作っていくことができるため、文字入力や図形配置などの「作業」に時間を取られるより、全部手描きの方が効率的な場面もあるだろう。

また、iPadはペンでタップするだけで直前の手描きノートが起動するインスタントノート機能や、ノートを取るためのNotabilityなどのサードパーティアプリもそろってきた。これらのアプリによって、紙のノートと鉛筆をiPadとApple Pencil、あるいはLogitech Crayonに置き換えることもできるだろう。

iPadがパワフルなプロセッサを導入した理由として、教室での拡張現実(AR)アプリの活用がある。高校の教室を用いたハンズオンでは、教科書の表紙を読み取ると教科書に出てくる動物などがテーブルの上で動き始めるアプリのデモが行われていた。世界中の美術館の作品をギリギリまで近寄ってみることができるアプリなど、教科を問わず教育現場のさまざまな場面でARアプリの活用が広がろうとしている。A10 Fusionを搭載することによる処理性能向上が、iPadの体験を構成する上で重要不可欠な要素なのだ。