三菱グループ内で変化する三菱自と三菱商事の関係性
三菱自が復活再生に向け新型車「エクリプス クロス」を国内発売する直前の2月20日には、三菱商事が三菱自への出資比率を引き上げて従来の1割弱から20%とし、同社を持分法適用関連会社にすると発表した。三菱商事は株式公開買い付け(TOB)を実施し、三菱重工業などが持つ三菱自株式を取得する。
TOBが済んでも、三菱自の筆頭株主は発行済み株式の34%を所有する日産のままだが、第2位には変化がある。従来、三菱自株式の9.24%を持つ三菱商事は名目上の第2位株主だったのだが、三菱重工は子会社保有分などを合わせて実質的に三菱自株式の約10%を所有していた。TOBが完了すると、三菱重工の三菱自に対する出資比率は1.45%となり、三菱商事は同20%となるので、三菱商事は名実ともに三菱自の第2位株主となる。
これにより、日本最強財閥といわれる「スリーダイヤ」の三菱グループ内で、三菱自への出資関係は三菱商事に集約されることになる。日産とともに、三菱商事も三菱自の経営面への関係性を強めそうだ。「商社」としては、自動車関連事業の強化にも結びつけたい意図が感じられる。
そもそも三菱自は三菱重工の自動車部門だったのだが、1970年に三菱重工100%子会社として分離し、三菱自動車工業としてスタートした経緯がある。本来、三菱重工と三菱自は親子の関係であり、三菱自がリコール隠しなどの不祥事で経営破綻の危機に直面した2004年に、支援に加わった三菱グループの中で最も深く関わったのは三菱重工だった。
三菱自の人事にも注目
しかし、三菱重工はここへきて、民間ジェット機「MRJ」の開発遅延や火力発電設備の不振に加え、造船など不採算事業のテコ入れを迫られるなど、業績の立て直しが急務となっていることから、三菱自株の大半を売却することを決めた。これにより、歴史ある三菱重工と三菱自の親子関係は完全に解消することになった。
逆に三菱商事としては、これを機に三菱グループの代表として、日産やルノーとも連携し、商社としての自動車関連事業を一段と強固なものにしたいと考えていそうだ。すでに三菱商事は、リコール隠し問題の後、ダイムラーと三菱自の提携関係が崩れたことから、2005年に益子修氏を送り込んでいる。その後も三菱自の東南アジアやロシアでの海外販売の一端を担い、すでに37人を三菱自の海外部門を中心に派遣しているのだ。
今回、特に注目されるのは、三菱商事が日産に次ぐ2位株主となったことにより、2018年4月1日付けで三菱商事の辻昇執行役員・自動車事業本部長が三菱自の経営戦略担当専務執行役員に就任することである。日産からの役員派遣との兼ね合いもあろうが、三菱自では三菱商事出身の益子氏が長くCEOを務めているだけに、ポスト益子の有力候補とも目される。