三菱自動車が発売したコンパクトSUV「エクリプス クロス」。国内で4年ぶりとなる新車は、三菱自の乗用車開発が今後、SUVと電動車に特化していく方向性を示す第一弾のクルマでもある。三菱グループ内では、三菱自の新車発売に合わせるかのように三菱商事が動きを見せた。
新車が背負う三菱自動車の歴史
「エクリプス」というのは、三菱自の歴史の中で、かつて輝いた車種に与えられた名称だった。三菱自と米クライスラーの資本提携時、1980年代後半の米国生産進出として、米イリノイ州にクライスラーとの合弁生産会社を設立し、現地生産の第1号車として作ったスポーツクーペが「エクリプス」という名前だったのだ。この米国合弁工場で生産されたエクリプスは、北米市場で高い評価を受けるとともに、日本市場にも逆輸入されて話題を呼んだ。
今回、新開発のコンパクトSUVを市場投入するに際し、三菱自の益子修CEOは「過去の遺産と新技術への挑戦を込めて『エクリプス』の名前を復活させた。自画自賛ではないが『いいクルマ』に仕上がった」と新生三菱自動車への意欲と覚悟のほどを示した。
アライアンス参加以前に走り出した「エクリプス クロス」
新型車「エクリプス クロス」は、三菱自の新中期経営計画「DRIVE FOR GROWTH」を達成するためのグローバル戦略車と位置づけられ、日本市場発売に先行して2017年10月から欧州、11月から豪州・ニュージーランド、アセアン地域、2018年1月から北米に向けた出荷が始まっている。最終的には約80カ国で販売する計画だ。三菱自はディーゼル搭載車を欧州向けに投入する計画を明かしており、将来的にはプラグインハイブリッド車(PHV)も用意する構えだ。
燃費データ不正問題から窮地に陥った三菱自は、2016年10月に日産自動車による34%の出資を受け入れ、ルノー・日産・三菱自の3社連合という新たな国際アライアンスの一員として再スタートを切った。日産傘下の三菱自では、日産主導による再建が進んでいる。だが、この「エクリプス クロス」は、日産との資本提携前から開発に着手していた新型車であり、三菱自が得意とするSUVとして、いろいろな意味で復活への思いを込めて、その橋頭堡としたいと意気込むクルマなのだ。