米国主体に5Gで存在感を高めるサムスン

だがファーウェイやZTEなどの中国勢は、政治的な要因が影響してか、最大の市場である米国のキャリアに向けてはネットワーク機器を提供できないでいる。そうした隙間をぬってこの市場での存在感を高めようとしているのが、韓国のサムスン電子だ。

スマートフォン最大手として知られるサムスンだが、実は基地局などのネットワーク機器も手掛けており、UQコミュニケーションズのWiMAXの基地局なども同社が多く手掛けている。加えてサムスンは現在、NTTドコモやKDDIと5Gのネットワークに関する実証実験も推し進めている。

そしてサムスンは日本だけでなく、地元となる韓国のキャリアや、米国でも最大手キャリアのベライゾン・ワイヤレスに、主として固定回線の代替として利用するCPE向けの通信機器を提供することを発表。製品ラインアップやカバーできる領域は大手に劣るものの、スマートフォンなどで培った技術力を武器に、ライバルの少ない米国を主体として、5Gを機に通信機器ベンダーとしての存在感を高めたい考えがあるようだ。

一方で、5G対応端末で通信をするのに欠かすことができないモデムチップに関しても、インテルやクアルコムのほか、ファーウェイやサムスンがMobile World Congressでの展示・発表を実施しており、台湾のメディアテックも5Gモデムのプロトタイプを披露。こちらの競争も激しくなっていることが分かる。

  • メディアテックが展示していた5Gのスマートフォン型試験端末。モデムはまだチップ化がなされておらず、現在はアンテナが搭載されているのみだという

そうしたことを意識してか、クアルコムは5G対応のモデム「Snapdragon X50」でいち早くスマートフォン向けに搭載できるサイズを実現したことや、6GHz以上の帯域に対応したことなどをアピール。CPE向けが主体で大きなサイズのモデムチップが多い中、自社の優位性を明確に打ち出していた。

  • クアルコムは5Gのモデムチップを基盤ベースから、スマートフォンサイズにまで小型化したことをアピールしている

ここまで触れてきたように、標準化に目途が立ったことから、5Gを利用する環境に関しては、水面下での争いが非常に激しくなり、それだけ事業化に向けた準備が前進していることが見えてくる。一方で、5Gの利用を活性化するのに欠かせない、デバイスやサービスなどに関してはまだ模索が続いている状態でもある。今後は5Gの利用活性化に向けた取り組みがより必要になるだろうし、そのためには通信機器ベンダーも、サービスなどにより踏み込んだ取り組みが求められるかもしれない。