大阪市は、市営地下鉄移管の目的、民営化の利点として、スピーディなサービス改善、不動産業など多様な事業展開、経営体質の強化を挙げている。市内交通の安全かつ円滑な実施については、もちろんのこと市営時代から退歩させるわけにはいかないがゆえの、大阪市の全株式保有。だから、今回の民営化の主たる目的は、経営の安定と多角化にほかならない。
大阪市営地下鉄単体では、単年度黒字決算を繰り返しており、累積欠損金も解消している。この状況を基礎として、今回の民営化により、税金を使う組織から、経営的に自立した税金を市に納める組織への転換が図られ、市の税負担を軽減するとしているのだ。一方、Osaka Metroは自らの意志決定と経営責任により事業を行い、公営企業ゆえの予算などの"縛り"からの脱却を図る。
なお、市バスについては資金不足。つまりは経営破綻状態に陥っているため、これは地下鉄と切り離して運行の継続を図り、経営再建を目指すことになる。
列車の運行と営業には影響なし
実際のところ、民営化されたとしても、すぐ何かが大きく変わるというわけではない。国鉄がJRとなり、営団地下鉄が東京メトロとなっても、すぐには変化がみられなかったのと同じ。電車や駅の看板についているマークが変わり、経営が移管されたのだなと、感じる程度だろう。
列車の運行や運賃などは、大阪市営地下鉄時代と変わらないと発表されている。民営化直前の3月24日には御堂筋線と中央線のダイヤ改正が行われるが、さほど大規模なものではない。要するに、従来通りのダイヤがそのままOsaka Metroのダイヤとなるわけで、地下鉄に対する需要が大きく変わらない限り、列車の運行体系は変わらない、変えようがないということだ。
安定した経営が見込まれるだけに、運賃も当面はそのままであろう。すでに、民営化を前提として、2014年4月1日には1区の運賃を200円から180円に、2017年4月1日には2区の運賃を240円から230円へと引き下げている。一日乗車券(エンジョイエコカード)などの割引乗車券類や、ICカード利用の際の各種サービス、地下鉄と市バスとの乗り継ぎ割引なども従来通りだ。むしろ、民営化に伴う新サービスの展開の方が期待できよう。