5GとAIは似ている?
もう1つ、5G全体の動向を見据える上では、国による5Gへの温度差も気になるところだ。4Gで先行してきた日本など東アジアや米国では5Gの導入に積極的だが、4Gのインフラ整備が遅れている欧州のキャリアは、5Gによるサービス提供に「腰が重い」(中村武宏氏)状況だ。
この点について中村寛氏は「欧州ではいま4Gに目が向いているが、彼らも時間が経てば5Gを導入する。今でも2Gを用いている国もあるのだから、時間差がありながらも最終的には同じところに向かうのではないか」と話す。そうした意味でも、NTTドコモとしては5Gの先行事例をいち早く作り上げ、前向きな取り組みを見せていく必要があると感じているようだ。
ちなみに中村寛氏は、5Gに並ぶ研究テーマとしてもう1つ、AIとビッグデータの活用を挙げ、「AIは5Gと似た所がある」と話している。その理由は、双方共に技術としては優れているものの、技術だけで人々の生活を便利にするわけではないということ。ゆえにそれらを活用して便利なサービスを提供する上では、サービスを提供する企業側のニーズを見極めることが非常に重要だと、中村寛氏は話している。
それゆえ5Gだけでなく、AIに関してもパートナーとの協業を強化していく方針のようだ。NTTドコモのAIは従来、ネットワークの最適化や、「dマーケット」で消費者に商品やサービスをレコメンドする仕組みなど、NTTドコモ内のサービスで利活用することが主となっていた。だがNTTドコモでは昨年6月に、同社のAIエージェント機能をAPI化し、パートナー企業と共同でサービスなどの開発を進める「ドコモAIエージェント・オープンパートナーイニシアティブ」を開始。今年の春にはそれを活用したサービスが登場してくるとのことだ。
5GやAIといった多くの先端技術を持つNTTドコモだが、一方で3Gでは技術が先行し過ぎて成功に至らず、4Gでもやはり技術やサービス面では先行しながらも、後発の事業者がなし崩し的に「4G」という言葉をプロモーションに用い積極的なアピールを進めたことで、むしろ後れを取っているように見られてしまうなど、技術をビジネスに乗せるという部分では弱さがあるように見える。そうした弱さを補いながらも同社の技術をフル活用する上では、やはり自社だけでは生み出せないさまざまな発想を持つ、パートナーとの協業による5Gの活用が大きな意味を持ってくるといえそうだ。