今後は「5Gのリアル」を伝えることも重要に

ただし個々のサービス事例を見ていくと、必ずしも5Gでなければ実現できないものばかりではないように見える。この点について中村武宏氏は、「現状の4Gでもそれなりに動くサービスがほとんどだが、5Gになることで現状よりも品質が大幅に改善される。そうなった時に5Gが評価されるようになるのではないか」と話す。

NTTドコモで5Gに関する研究開発を進めている、R&Dイノベーション本部長である中村寛氏も、これまでの実証実験の事例を例として挙げて5Gの重要性を説明。例えば遠隔医療の実証実験で、患部の映像をストリーミングで医者に送る場合、4Gと5Gでは一度に転送できるデータの量が大きく異なり、それが画質にも影響してくることから、患部の細かな部分まで確認できないなど決定的な違いを生み出すことにもつながってくる。それゆえ今後、同じサービスであっても4Gと5Gとでその価値や評価が大きく変わってくる、といった事例が増えてくると見ているようだ。

  • NTTドコモのR&Dイノベーション本部長である中村寛氏

また中村寛氏は、「4Gまでの主流はコンシューマー向けで、その傾向は5Gでも続くが、一方で法人向けの利用が今後増えてくるのではないか」とも話している。特に遠隔操作に役立つ低遅延や、IoTに対応する多接続といった5Gの特徴は、法人向けのビジネスを拡大する上で大きく貢献すると考えているようだ。

では、5Gの利用を拡大する上での課題はどのような所にあるのだろうか。中村武宏氏は「これまで5Gで『何でもできる、すごい』と花火を打ち上げてきたことから、最初から凄いことができると思われている節がある。今後は5Gのリアルな姿を訴求していく必要がある」と話している。

5Gへの関心を高めることは重要ではあるものの、5Gの標準化自体まだ途上の状態であり、最初からフルスペックの5Gによるサービスを提供できるわけではない。それゆえ実際に5Gを利用してもらう上では、5Gの現時点でのリアルな姿を訴求することで、5Gに対する理解を深めてもらいながら実際のサービス提供へと落とし込んでいく必要があるようだ。