日本では2020年に商用サービスを開始する予定の次世代モバイル通信規格「5G」。昨年5Gの標準仕様策定に向け大きな前進が見られたことで、5Gの商用化に向けた目途は立ったものの、5Gの利用を促進するデバイスやサービスが不在なことから普及の遅れを懸念する声も多い。5Gの商用サービスに向け積極的に取り組んでいる企業の1つであるNTTドコモは、普及に向けどのような施策を進めようとしているのだろうか。関係者の取材から迫ってみよう。
5Gを知ってもらうにはサービスの具現化が必要
いま携帯電話業界で非常に大きなテーマとなっているのが、次世代のモバイル通信規格「5G」だ。5Gは昨年、標準化3GPPにて5Gの通信方式「5G NR」の標準仕様の初回策定が完了したことから商用化に向けた準備が大幅に前進。早い国では2019年、日本では東京五輪に合わせて2020年の商用サービス提供を開始するとしている。
そうしたことから今年スペイン・バルセロナで実施された、携帯電話の総合見本市イベント「Mobile World Congress 2018」では、5Gに関する展示が大幅に増え、業界全体で5Gに対する機運が大きく高まっている様子を見ることができた。だが一方で5Gに関しては、4Gの時のスマートフォンのように、普及をけん引するデバイスやサービスが存在せず、普及がなかなか進まないのではないかという懸念も少なからずなされている。
では、実際に5Gのサービスを提供する側のキャリアは、5Gのサービス開始、そしてその普及に向けてどのような考えを持っているのだろうか。Mobile World Congressの会場にて、NTTドコモの5Gのインフラとサービス、それぞれの関係者に話を聞いた。
NTTドコモの5G推進室長である中村武宏氏は、同社の5Gの進展状況について、標準化の進展によって開発が進められる段階にきたものの、「世界各国のキャリアやベンダーと調整が必要になるし、システム開発もどんどん進めていかないといけない。また複数のベンダーの機器と接続する必要があり、その試験にも時間がかかる。2020年の商用サービス開始まで、時間的にはタイトだ」と答える。商用化に向けてインフラ面で急速に準備を進めている様子がうかがえる。
一方で、NTTドコモでは昨年より、5Gを活用した新しいサービスの創出に向けた「5Gトライアルサイト」を展開するなどして、5Gのさまざまな活用事例などを一般消費者に紹介。特に昨年末頃には、5Gを中心にNTTグループの技術を活用した新しいエンタテインメント体験を提供する「FUTURE-EXPERIMENT」を展開するなどして、5Gのアピールを一層強めている。
こうした取り組みの狙いとして、中村武宏氏は「5Gのサービスは何かと聞かれると、明確な答えはない。色々なパートナーと事例を作り、それをきっかけとしてより現実的なサービスを作り上げていく必要がある」と話している。確かに5Gは高い性能を誇るが、それを口で説明しても伝わりにくい。具現化したサービスを実際に見せていくことで、5Gを活用したより新しいアイデアを生み出してもらうというのが、大きな狙いとなっているようだ。