ネットワークやデバイスに関するメーカーの準備が整い、大きな進展が見られる一方で、温度差が感じられたのがキャリアの動向です。日本のほか、米・中・韓といった4Gのネットワーク整備が先行している国々のキャリアは5Gに対する関心が高いのですが、世界各国のキャリアの展示を見ていると、注力するポイントにはやはり温度差があるように見えます。

5Gによるサービス提供に最も積極的な姿勢を示しているのは、日本と韓国のキャリアです。実際、日本のキャリアで唯一出展しているNTTドコモは、NTTグループと共同で例年より大きなブースを構え、5Gの活用事例をアピール。新日鐵住金ソリューションズとの協業で開発している、5Gの高速大容量と低遅延を生かした遠隔操作ロボットを用いた書道のデモを実施し人気となるなど、パートナー企業との5Gを活用した事例を多数展示していました。

  • NTTドコモのブースでは、NTTと共同で5Gの活用事例に関する展示を大幅に拡大。中でも遠隔操作で人と同じ動きをするロボットによる書道のデモは、大きな注目を集めていた

一方、国土が広い米国や中国などは当初、どちらかといえばCPEを用いた固定ブロードバンドの代替として5Gを活用したいと考えているようです。それゆえ展示内容も控えめで、日韓のキャリアと比べると温度差があるように見えます。

それ以上に、5Gの取り組みに消極的な様子を示していたのが欧州のキャリアです。欧州では電波免許の割り当てにオークション制が採用されており、免許獲得だけのため高額な投資が必要となってしまうことから、インフラ整備の面で日本などに後れを取っているのです。

それゆえ欧州では現在も4Gのネットワーク整備が途上という所が多く、キャリア側も5Gの整備を急いで経済的な負担を増やすより、既存の4Gを用いたビジネスに力を入れ、売上を高めたいと考えているようです。実際、フランスのOrangeや、イギリスのボーダフォンといった欧州キャリアの展示を見ると、5GよりもコネクテッドホームやIoTなどに力を入れているように見えました。

  • ボーダフォンなど欧州のキャリアは5Gの展示は小さめで、コネクテッドホームやIoTなどに展示の主眼が置かれていた

携帯電話業界での5Gに対する機運が高まっているのは確かですが、消費者の目線からすると、スマートフォンが4Gをけん引したように、キラーとなるデバイスがなく関心があまり高まっていないのも事実です。5Gの商用サービス開始に向けネットワーク面での準備が着実に進む今後は、5Gを有効活用するための施策が大きく問われることとなるでしょう。