世界最大の自動車市場・中国では積極姿勢
日産は、無資格検査問題の影響が色濃い日本事業の正常化や米国販売の立て直しを尻目に、中国での販売拡大戦略をぶちあげている。
中国での合弁先である東風汽車では、2022年までの5年間で600億元(1兆円強)を投資する計画を発表。中国での販売台数は、昨年の150万台から2022年までに260万台まで引き上げるとする。また、純粋な電気自動車(EV)や、日産独自のハイブリッド技術である「e-POWER」搭載車を含めた20車種の電動車を投入し、2022年までに電動化車両の販売台数を78万台(全体の30%)に引き上げるというのだ。
世界最大の自動車市場となった中国では、独VWを米GMが追い、さらにホンダ、日産、フォード、トヨタが第三勢力を形作る構図となっているが、日産はこの第三勢力から抜け出し、VWおよびGMと並ぶ位置づけを確保していく方針だ。中国が国策とする電動化施策に呼応してEV化を積極的に進める一方、中国の配車アプリ大手である滴滴出行とルノー・日産・三菱自連合がEVシェアリング協業で提携合意するなど、積極的な動きをみせている。
国内販売に復活の兆し? 米国では攻めの姿勢が裏目に
一方、国内販売では無資格検査問題によるダメージからの復活を進めることが課題だ。国内販売は「昨年10~12月の受注は減少したが、今年に入って1月は昨年を超える受注に戻ってきている」(星野朝子国内営業統括専務)とする。だが、「セレナ」から続く新型車投入による国内巻き返しの途上で、2代目となったEV「リーフ」の発売間際に無資格検査問題が発覚したことは、日産ブランドのイメージダウンにつながった。消費者心理に与えた影響は大きいだろう。
加えて、三菱自からOEM供給を受ける軽自動車も、ようやく燃費不正問題が落とした影を払拭してきたばかりの状況である。今や国内販売シェアで5位のメーカーとなった日産が、厳しい国内販売競争で立て直しを図るのはこれからである。
さらに、米国販売における過剰在庫問題は、ピークアウトした米国市場において日産の卸売りと小売りのアンバランス、高騰したインセンティブの正常化に向けた大きな課題となっている。
米国の自動車市場は2016年をピークとし、2017年は1,723万台と前年から2%減少して縮小傾向を示す。需要構造は乗用車セダンからピックアップトラックや大型SUVへとシフトしている状況だ。
日産は、この全需動向や需要構造変化の見通しを誤り、従来の攻めの戦略を進めたことでインセンティブの高騰を招き、過剰在庫を抱える結果となった。日産にとって米国は、中国とともに収益基盤であるだけに、米国事業の失敗は大きな痛手となる。米国事業の立て直し、販売正常化も急務となっているのだ。