相次ぐ業績好調企業の社長交代から見えるパラダイムシフト

そしてライフデザイン事業に力を入れる上で、適任と考えたのが高橋氏である。法人ビジネスやネットワークで実績を上げてきた田中氏とは異なり、高橋氏はフィーチャーフォン時代から、特にコンテンツ・サービス面で多くの新規事業開発に多く携わっている。消費者に近い接点を持つサービスで実績を築いていることが、ライフデザイン事業を一層強化する上で大きな強みになると考え、田中氏は高橋氏に事業を託したといえそうだ。

  • 新たに社長へと就任する高橋氏は、コンテンツやサービスなどの新規事業を多く手掛けてきた実績があり、なおかつ事業改革に意欲的な人物だ

また田中氏によると、高橋氏は「いろいろな課題があり、右に行くか左に行くかという選択肢がある中で、必ず行く方を選ぶ」人物だという。事業構造の大きな変革が求められる中で、ある程度リスクがあっても変革を前に進める力が、今後の競争を乗り切る上で適しているとの判断も働いたようだ。

その高橋氏も、今後のKDDIに関して「中期計画の3年目はライフデザイン企業への変革がテーマになっているが、実はそれだけでは足りないと思っている」と話している。産業構造が大きく変わる今後を乗り切るためには、通信を軸としながらも、従来より一層大きな改革が必要と考えているようで、改革路線に大きく舵を切ることを示唆している。

実はここ最近、KDDIだけでなく、ヤフーが宮坂学氏から川邊健太郎氏へ、ソニーが平井一夫氏から吉田憲一氏へと、社長を交代する動きが相次いでいる。そしてそれらはいずれも、業績が好調な中での社長交代という点で共通している。

こうした各社の動向からも、IT産業全体に次の大きなパラダイムシフトが訪れると考えられており、それに先んじて新たな体制を構築しておきたいという傾向が見えてくる。そうした各社がどのような体制を構築し、大きな変化に対応しながら成果を生み出せるかは、今後の大きな注目ポイントになってくるといえそうだ。