クルザニッチ氏はさらに、同社の次世代コンピューティングチップに対する取り組みを披露した。最初に取り上げたのは、脳の神経細胞(Neuron:ニューロン)を模倣することで、クラウドに依存することなくシリコンそのものに学習能力をたせるニューロモーフィック・コンピューティング(シリコンブレインとも呼ばれる)だ。
Intelは、このニューロモーフィック・コンピューティング対応の自己学習型のAIチップ「Loihi」を開発している。Loichi最大の特徴は、脳との神経細胞と同じ構造のチップ内で、評価の重み付けを行えるため、より少ないデータ量でも学習を進められる。
つまり、効率的なAIの実装ができるようになり、今日一般的な機械学習ベースのAIと比べて約100万倍の学習効率を可能にするのだと言う。
また、同氏はIntelの量子コンピュータチップの進化についても最新情報を公開した。49qubit(n qubitは2のn乗)、つまり、140,737,488,355,328通りの演算を一度に行なえる試作チップ"Tangle Lake"を披露。今後も、Intelは次世代コンピューティング環境の開発に投資を続けていく意向を示した。
自動運転とドローン型タクシー
クルザニッチ氏は、2017年にIntelが買収したイスラエルのMobileyeとの取り組みについても振り返った。同氏は「自動運転の実現により、人々は年間157時間の移動時間を節約することができ、世界全体で125万人の命を交通事故から守ることができる。最適な運転により、年間1,500億ドルの燃料代も節約できる」とアピール。
Mobileye CEO/CTOでIntelの上級副社長でもあるアムノン・シャシュア氏を招いて、Mobileye技術を採用した運転支援車両2,400万台が世界中を走っており、Intel Atomプロセッサを採用する同社の新しい自動運転プラットフォームEyeQ5によって、レベル3/4/5の自動運転車開発を加速するとした。
また、Mobileyeは、中国最大の自動車メーカーでもある上海のSAIC(上汽集団)との提携を果たし、すでに提携を果たしているフォルクスワーゲン、BMW、日産、NAVINFOとともに、各国の道路交通法に準拠した自動運転車両の開発を加速させていく考えだ。
また、クルザニッチ氏は、自動運転は陸上だけのものではないとして、ドイツで2人乗りドローンを開発しているVolocopterに、同社のフライトコントロール技術を提供することで、自動運転による空飛ぶタクシーも実現できるとした。
そして同氏自らが体験した無人フライトテストの様子をビデオで紹介するとともに、キーノート会場でも隔離したスペースにおいて短距離・低空ながら無人フライトを行なった。
最後に、クルザニッチ氏は、Volocopterにも利用されたフライトコントロール技術を使って、GPSを搭載しない小型ドローン100機を1台のコンピューターで制御し、音楽にあわせて会場内をそのLEDライトで彩るデモも披露した。