学割強化の狙いはユーザー基盤の安定化か

総務省のガイドラインが登場して以降、端末の大幅な値引きなどが影を潜め、低価格なMVNOが10%近いシェアを獲得するなど、携帯市場にも流動化の動きが見えてきた。これに対して3大キャリアは端末の割賦契約を2年から4年に伸ばしたり、長期契約者への特典強化などで対応しているが、昨年あたりから強化されているのが「学割」だ。

キャリアが学生を狙う理由としては、親が生計を握っている学生の場合、複数回線割引を提供することで親子を共に獲得しやすいこと、卒業までの数年はキャリアが変わりにくいこと、結果として長期割引が適用されるようになれば、卒業後も長く利用することが期待できることなどが挙げられるだろう。そのため、通常プランと比較するとかなり思い切った割引が行われているのが現状だ。

NTTドコモは「ドコモの学割」、auは「ピタット学割」「フラット学割」を展開している。「ドコモの学割」は親とシェアグループに入ることで月額280円〜という低価格を、auは月額1480円/1GB〜の「ピタット定額」、20GBで3980円〜、30GBで5980円〜(それぞれ通常は4500円〜、6500円〜)の「フラット定額」で、低価格志向と大容量ユーザーをともにカバーしている。

これに対抗する形となったソフトバンクは、大容量側のユーザーは他社に倍する50GBの「学割先生」で大きく掬いつつ、低価格志向のユーザーへは「スマホデビュー割」にiPhone 8を加えることで、利用料を大きく下げることなくアピールしてみせた。これから本格化する春の学生加入シーズンに向けて、なかなか強力な武器を用意したと言えるだろう。

株式公開との関係は?

今回の発表会が開催される直前、日経新聞が「ソフトバンクグループは今年中にも携帯会社であるソフトバンクの株式公開を計画している」と報道した。ソフトバンクグループからは「正式に進めることを決定した事実はない」というコメントが発表されており、今回の発表会では「ソフトバンクとしてのコメントは控える」としてこの件に関する言及はなかったが、もし実現すれば、株式公開後は独立した事業としての採算性を高めなければならず、そのためには長期間にわたって安定してユーザーを確保していくことが重要になる。

そうした事情も勘案してみると、他社と比べてかなりの大盤振る舞いに見える今回の学割強化は、学生のうちからユーザーを囲い込み、安定した経営基盤を確保する地盤強化のための施策と受け取ることもできる。また、教員を取り込む点については、ソフトバンクが強化している教育ICT向けの事業との連動においても、ソフトバンクユーザーを増えれば採用が有利になるという思惑があるのではないか、という推測もできる。

一方でMVNOなども一部で家族割など、MNOに対抗する施策を広げてきており、従来のように「家族で囲い込めば安泰」とはいえない状況も出てきている。今春の新生活シーズン商戦において、ソフトバンクの選択が市場にどう受け入れられるかが注目される。