――劇中のジンガのセリフにもありますが、流牙とジンガはお互いに似ているところがありつつ、それゆえに対立しているという。まさにライバル関係にあるんですね。
栗山:戦いを好む、求めているという部分など、まさに流牙とジンガは表裏一体の関係なんです。ふとどこかでボタンを掛け違えたら、流牙もジンガのような邪悪な存在になっていたかもしれないし、あるいは逆にジンガも流牙のようになっていたと思いますね。
雨宮:繰り返しになりますが、まさにこの映画は流牙とジンガの"価値観のぶつかりあい"がテーマ。栗山は優しい感じがベースなんだけど、負けず嫌いなところがあったり、意外と激しいところも持ち合わせています。一方、井上の場合は優し気な顔の中にも狂気をはらんでいる。対照的でもあり、似ているところもある。
栗山:共演していて、まーくんがジンガとして立っているときの圧倒的な圧力が心地いいんです。細かいセリフのあれこれじゃなくて、あの出で立ち、あの雰囲気で立っている。そのことに感謝しながら、演じさせてもらいました。
――ジンガとの決戦において、流牙が己の「負けられない理由」を叫ぶくだりは実に熱く、観る者の心に響くシーンとなりました。
栗山:演じていて凄くハードでしたが、あそこが流牙っぽい部分を最大限に出せるところでもあったので、気持ちよくもありましたね。
雨宮:流牙が叫ぶ、あのシーンが映画のクライマックスです。あそこでお客さんがスカッとしてくれるように編集しています。そして、もう一つの山場としては、その後に流牙、猛竜、哀空吏、莉杏の4人が並ぶところがありますね。特にアクションをしているわけではなく、並んでいるだけなんだけど、あそこでグッとくることのできる人は、そうとう「牙狼」が好きですね。今まで、映画をやるときは過去の「牙狼」シリーズを観ていなくても楽しめますよと言っていたんですけど、今回だけはこれまでの流牙の戦いを観ていたほうが、絶対に面白いですよ、と言いたい。
――本作でも「牙狼」シリーズならではといえる異形の怪物の襲撃シーンや、異空間でのバトルが繰り広げられていますが、映画の中で特に印象に残るビジュアルを挙げるとすればどんなところでしょうか。
栗山:雨宮監督の作品はすべて美しいビジュアルに彩られているので、すべてのシーンを挙げたいところなのですが、特に絞ると「大人数の敵VS魔戒騎士」といったアクションシーンでの画作りが、強く印象に残りました。「なんてぜいたくな画だ!」と思いましたね。
雨宮:映画っぽさというのもありますが、圧倒的多勢の敵の真ん中に流牙が立っているという絵面は、今までのテレビシリーズでは撮れなかったんです。実際にそういう画を撮ってみると、画面に力があって美しいんです。カメラアングルもうまくいっていますが、仕上げのときに流牙だけ肌色が残っていて、周りの顔色が蒼白になっているというように画面を効果的に見せるよう、後処理の段階で細かい表現を施した、という苦労もありましたね。 現実的な場所が舞台となっていても、フルCGで表現する異世界と同じくらい、時間と手間がかかっているんです。
――ありがとうございます。それでは最後に、栗山さんと雨宮監督から、映画『神ノ牙』の見どころをひと言ずつお聞かせください。
栗山:「牙狼」シリーズが好きな人にはたまらない映画だと思います。流牙シリーズのキャストが大集合していますし、アクションも満載。お得感と見応えのある映画です。シリーズをずっと好きでいてくださる方はもちろん、初めて「牙狼」の世界に触れる方にも純粋にカッコイイなと思えるような楽しめるシーンがありますので、たくさんの方々に観に来ていただきたいです。
雨宮:戦う者の価値観はどのように異なるのか……今まで「牙狼」において劇中で明確には言わせず、ずっと抱えていたものを自分なりに真面目に考え、流牙の口から「叫び」として言ってもらいました。僕の「叫び」と流牙の「叫び」は同じものなので、とてもスッキリした。「こういうところに着地したかったんだ」と言える映画にすることができました。たくさんのキャラクターが出てくる集大成的映画ですが、ずっと「牙狼」を作り続けてきた僕自身の集大成でもあり、こういったステージに来られてよかったな……という思いがあります。ぜひとも多くの方たちに、劇場でご覧いただきたいですね。
■著者プロフィール
秋田英夫
主に特撮ヒーロー作品や怪獣映画を扱う雑誌などで執筆。これまで『宇宙刑事大全』『宇宙刑事年代記』『メタルヒーロー最強戦士列伝』『ウルトラマン画報』『大人のウルトラマンシリーズ大図鑑』『ゴジラの常識』『仮面ライダー昭和最強伝説』『日本特撮技術大全』『東映スーパー戦隊大全』『ゴーグルV・ダイナマン・バイオマン大全』『鈴村健一・神谷浩史の仮面ラジレンジャー大百科』をはじめとする書籍・ムック・雑誌などに、関係者インタビューおよび作品研究記事を多数掲載。
(C)2018「KAMINOKIBA」雨宮慶太/東北新社