――そういう意味では、アクション監督の横山誠さんの参加も心強いのではなかったでしょうか。
栗山:それはもう、『闇を照らす者』のころから僕のことをよく知っていて、僕を育ててくださった横山監督と組むことができたのもよかったです。流牙としては「静」か「動」かでいえば、「静」の人でありたいと思っているんです。無駄に動きまわらない上級者、達人という雰囲気を出せたらいいなと思って、相談をさせていただき、そういう意図をアクションの中に入れ込んでくださいましたね。
雨宮:横山監督とは、監督とアクション監督という立場で組むのは久しぶりでしたが、まったく心配はありませんでした。お互いの中にそれぞれ、キャラクターをどう立てるかという思いを持っているところ。ここが一番の大きなポイントだと思います。彼が殺陣をつける際に、僕がやりたかったアイデアのいくつかを入れてくれたりして、そういう部分でも信頼していましたね。
――栗山さんは今回、アクションシーンで特にキツかったことなんてありますか。
栗山:高いところから落ちたりするシーンもあったのですが、ものすごく安全を考慮しながら指導していただいているので、そんなにキツいことはなかったですね。
雨宮:何より栗山にとって大変なのは、疲労でしょうね。一日で撮る量が多いですから。「疲れた~」って言ったころに、まだまだ終わらない。栗山を休ませながら撮りたいんですけど、どうしてもそういう環境が作れずに、ずっと撮影が続いたり……そこがキツかったかもしれません。
栗山:でも慣れましたよ。流牙シリーズとしてテレビをずっとやってきましたからね。
雨宮:栗山にしか、そういう無茶なことはやらせられないですね。横山監督と相談しながら、栗山だからここまで出来るんだ、と思ってやってもらっています。彼には持久力があるのに加え、この現場をわかっている部分がある。撮影の合間にうまく休むとか、経験からそういった工夫が出来ているんです。休憩中のちょっとした衣裳の脱ぎ方、ボタンの外し方とかね。初めてこういった役に取り組む人だと、たとえ栗山と同じくらい動くことができても、休むコツをつかめずに頑張りすぎて、しまいにはケガをしてしまうかもしれないという心配があります。
――映画ゲストとして、お笑いコンビ・野性爆弾のくっきーさんがホラーのボエル役で出演されています。テレビのバラエティ番組で見せる特異なキャラがそのまま出ているかのようなくっきーさんは、不気味さとコミカルさがうまく融合して、強烈な印象を残していますね。劇中での「食っちゃっていい?」とか「こんにちわ(ボソッ)」とかのセリフもかなりクセが強いですが、あれはくっきーさんのアドリブだったのでしょうか。
雨宮:アドリブ半分、僕の指示半分ですかね。
栗山:(笑)。
雨宮:実は、昔からくっきーさんのあのキャラクターが気に入っていて、以前からオファーしていたんです。それでやっと今回実現したのですが、すごく良い個性を出されていましたね。
栗山:くっきーさんのお顔を生かした、ナチュラルメイクのホラーでしたね(笑)。
雨宮:そもそも僕は、好きな役者さんと仕事をしたいんですよ。出ていただけるのなら、どういう風に出したほうがその人の魅力が出るのか、どんなセリフがもっとも効果的なのか、常に考えています。
――今回のバトルシーンで強く印象に残るのは、ホラーがかわいい犬を抱き上げると、その犬の口からマシンガンの銃弾が飛び出してくるというシークエンス。一瞬、流牙もあっけにとられるみたいな演出が入って、とてもインパクトがありました。
雨宮:あれは以前から、どこかで出してみたいと思っていたアイデアだったんですよ。どうせ出すのなら、栗山(流牙)に攻撃したほうがいいと。なぜなら、彼は普段から動物が好きでしたから。
栗山:そうなんです。
雨宮:流牙としても、人間のカタチをしたホラーは斬れてもかわいい動物は斬らないはずですから、そこで「犬マシンガン」が出てくるとピンチになる。お客さんには、そこでクスっと笑ってほしいですし、流牙の"優しさ"のような面を見せることができたらと思いました。
栗山:どんなに危険な敵であっても、犬は斬らないというところはすごく流牙っぽいですよね。ほかの魔戒騎士だと、犬ごとズバッと斬っちゃうかもしれませんし。そういう流牙の個性の部分を引き出してくださる雨宮監督は、本当に凄いです。
雨宮:さじ加減だと思いますけれど、ああいった少しコミカルなシチュエーションでも、大真面目に栗山が演じてくれたから成功したという感じです。殺陣もカッコいいんですよ。最後にホラーを斬った動きとかね。