安さを求める顧客に付加サービスを契約してもらえるか
だが総務省以外にも、大手キャリアを苦しめる大きな要素が1つある。それはARPUの低下だ。先にも触れた通り、大手キャリアはここ最近、顧客流出阻止のためサブブランドや低価格な料金プランを提供したのだが、その結果として当然のことながら、顧客1人当たりから得られる料金は減少しているのだ。
実際、ソフトバンクの2018年3月期 第2四半期決算において、ソフトバンク・ワイモバイルの主要回線の通信ARPUを見ると、前年同期比220円減の3790円となっている。同社のARPUの減少は既に長期的な傾向となっており、ワイモバイルへの注力によって通信事業でベースとなる売上を落としている様子を見て取ることができるだろう。
またKDDIも、高い売上を誇るauの契約者数が2500万を切るなど減少トレンドにある一方、UQ mobileなどのユーザー数が100万を超え、大幅に伸びている。それだけKDDIも1契約当たりの単価が低いユーザーが増えていると見られ、収益低下をいかにカバーするかが大きな課題となってくる。
この点について、大手キャリアは既存顧客に対し、充実したサービスやコンテンツを提供することによって、売上を高める戦略に打って出ている。実際NTTドコモは「スマートライフ領域」の事業強化を図っており、金融・決済系サービスは、取扱高が1兆5000億円近くに上り、dカードの契約数も1800を超えるなど好調だ。またスポーツ動画配信の「DAZN for docomo」を展開するなどサービスの充実を図るなど、利用できるサービスの拡大を進めている。
KDDIも同様に、ライフデザイン事業への注力を進めており、有料会員サービスの「auスマートパス」は1500会員を突破。さらに決済サービスの「au WALLET」も、有効発行枚数が2000万を超えているほか、最近ではディー・エヌ・エーから買収して事業展開している「Wowma!」への注力を進めることで、サービスの拡大を図っている。
一方ソフトバンクは、自社サービスの充実度は高くないものの、同じソフトバンクグループ傘下のヤフーが運営する「Yahoo! Japan」との連携を急速拡大。ソフトバンク・ワイモバイル契約者に対し、有料の「Yahoo!プレミアム会員」相当のサービスを無料で提供する施策を展開しているほか、「Yahoo!ショッピング」で買い物をした時にポイントを優遇するキャンペーンなどを実施。ソフトバンクが持つ顧客を生かしてグループ内での売上を高める戦略に出ている。
だが今後は、各社共に一層低価格のサービス利用者が増える可能性が高く、付加サービスで売上を拡大していかなければ、従来通りの高収益体制を確保することは難しくなってくる。料金の安さを求める顧客に対していかに付加サービスを使ってもらうかという難題を乗り越えることが、今年以降大手キャリアにとって大きな課題となってくるだろう。