再び動き出した総務省、大手キャリアに影響を与えるか

それら一連の施策の結果、大手キャリアの顧客流出は確実に低下しているようだ。実際NTTドコモは、昨年10月27日の決算会見において、MVNOの伸び悩みを受けて、2017年度の契約純増数を220万から130万へと大幅に下方修正したことを明らかにしている。一方で同社の代表取締役社長である吉澤和弘氏は、「自社のスマートフォンやタブレットの契約数が大きく減っているわけではない」と話しており、NTTドコモの顧客は現状維持がなされているようだ。

低価格戦略の出遅れによって、MVNOへの顧客流出を最も懸念していたKDDIの代表取締役社長である田中孝司氏も、昨年11月1日の決算会見で「番号ポータビリティによる(他社への)流出も、グループ全体で見ればほぼ止まっている。アンダーコントロールな状況になりつつあるんじゃないか」と話しており、一連の施策によってMVNOへの流出阻止に目途が立ったとの発言をしている。

ようやく顧客流出阻止に目途をつけることができた大手キャリアだが、現在の調子が来年も続くかというと、そうとは限らない。その理由はやはり総務省にある。大手キャリア、ならびにそのサブブランドや傘下のMVNOが勢力を伸ばしたことで、独立系MVNOの勢いが落ち、3社の寡占体制に再び戻ってしまうことを総務省は懸念。大手キャリアとMVNOとの間に同質・同等性が確保されているかを検証するべく、12月25日に新しい有識者会議「モバイル市場の公正競争促進に関する検討会」を実施したのだ。

  • 12月25日に実施された「モバイル市場の公正競争促進に関する検討会」の様子

    12月25日に実施された「モバイル市場の公正競争促進に関する検討会」では、大手キャリアの2年縛りの自動継続や、サブブランドの優遇などについて問題提起がなされた

その第1回目の会議では、特に大手キャリアの「2年縛り」が自動更新されてしまうことを問題視する声や、大手キャリア傘下のMVNOやサブブランドが優遇され、独立系MVNOとの間で競争上の平等性が担保されていないのではないかという指摘などが多くなされていた。参加者の中からは「MVNOと大手キャリアとでは事業規模や資金力などで広大な差がある。MVNOを振興する観点に立つならば、何らかのハンディキャップを課すことも必要なのではないか」(神奈川大学経営学部 教授の関口博正氏)など、大手キャリアに一層厳しい措置が必要との声も上がっていたようだ。

この会議では今後、大手キャリアやMVNOなどへのヒアリングを実施し、今年の3月まで6回にわたって議論を実施して何らかの結論を出すものと考えられる。既に大手キャリアに対する厳しい意見が上がっているだけに、2015年の有識者会議同様、今回の会議が大手キャリアに何らかの逆風をもたらす可能性は十分あり得るだろう。