そんなスタッドレスタイヤを日本で最初に発売したのは、日本のタイヤメーカーではない。今から130年近く前の1889年に設立され、飲食店や宿泊施設のガイドブックでもその名を知られるミシュランだ。
開拓者ミシュランに“別格”の評価
ミシュランは1982年、日本でいち早くスタッドレスタイヤを発売して以来、このカテゴリーのリーダー的存在であり続けてきた。1991年には日本に研究開発センターを開設。ここで世界的にも雪が多い日本の道に最適なスタッドレスタイヤを生み出してきた。
日本のメーカーもスタッドレスタイヤを出してはいる。しかし雪国のドライバーに聞くと、ミシュランは別格という言葉を聞く。歴史の長さだけが理由ではなく、日本の雪道に合ったスタッドレスタイヤを送り出すべく、絶え間ない技術開発を進めていることもアドバンテージに結び付いているようだ。
新採用のコンパウンド「Mチップ」の効果とは
今年8月に発売した新製品の「X-ICE3+」(エックスアイス スリープラス)では、クロスZサイプとマイクロポンプと呼ばれる微小な穴とサイプが水膜を取り除き、ジグザグ型のエッジがグリップ性能を高める「トリプル・エフェクト・ブロック」、3方向に刻んだサイプでさまざまな運転シーンに対応する「バリアブルアングルサイプ」、路面への接地圧力を均等にした「マックスタッチ」など、前作から引き継いだ技術に加え、「Mチップ」と名付けられた新しいコンパウンドを採用したことが特徴だ。
タイヤの摩耗が進んでいくと、表面に出たMチップが溶けることによって無数の穴が出現し、この穴が水を吸い取ることで凍結路でのブレーキ性能が向上しているという。スタッドレスタイヤは磨耗が進むにつれて性能が低下していく。ミシュランはこれに対し、従来から50%磨耗してもサイプが残る設計でロングライフを実現していた。今回のMチップはその長所を引き伸ばす技術として注目に値する。
もうひとつ、ミシュランのスタッドレスタイヤの特徴として挙げられるのが、雪や氷に覆われない通常の舗装路でも安全快適に走れること。凍結路面での性能は申し分ない反面、舗装路ではステアリングの感触が頼りなくなったりして不安を抱くタイプではないということだ。以前からミシュランが追求しているトータルパフォーマンスが形になったものと言える。