契約数拡大の切り札はやはり買収か

そこで、楽天が現在推し進めている戦略の1つに挙げられるのが、楽天のサービスとのシナジーを生かした顧客獲得策の強化だ。楽天は「楽天市場」「楽天カード」「楽天スーパーポイント」など、多くの人に利用されているサービスを持つ強みがある。それらのサービスと連携することで、効率よく契約獲得につなげることができているわけだ。

例えば、楽天モバイルを契約するとスーパーポイントアッププログラム(SPU)の対象となり、ポイントが2倍、楽天カードやスマートフォンアプリなど他のサービスと組み合わせて、最大で8倍のポイントが得られる仕組みを用意。さらに楽天スーパーポイントで楽天モバイルの携帯料金を支払える仕組みも用意していることから、楽天のサービス利用者にとってその魅力は大きい。

また楽天モバイルは端末の値引きによる販売施策を積極的に実施し、それが契約獲得に大きな効果をもたらしていることから、「楽天スーパーセール」でも楽天モバイルのスマートフォン値引きセールを実施。スーパーセールをきっかけに楽天モバイルに申し込んだ人が6割を超えるなど、契約数の拡大に貢献しているようだ。

  • 端末の値引き販売が加入者獲得に高い効果があるとのことで、楽天では「楽天スーパーセール」での端末セールを、楽天モバイルの加入者拡大にも結び付けている

そしてもう1つは、投資コストを抑えて契約数の獲得や顧客満足度を高める、コスト効率化の徹底だ。例えば、楽天モバイルのテレビCM投下量は大手キャリアのサブブランドの14分の1だというが、それでも楽天の他のサービスとの連携などによって、サブブランドと変わらないブランド認知を獲得しているという。さらに今後は利用者の声を取り入れた改善を積極的に進めることで、口コミによる契約の拡大も進めていきたい考えのようだ。

楽天モバイル事業を担当している、楽天の執行役員である大尾嘉宏人氏は、「モバイルとサービスとの組み合わせに関して言えば、楽天グループの総合力を生かすことで勝てると思っている。まだ打つ手はいっぱいある」と話し、ワイモバイルへの対抗にも自信を見せている。だが足元の会員数を見ると、楽天モバイルは3年かけてようやく100万契約を超えたという状況で、現状のペースでワイモバイルに追いつくのは相当厳しいと言わざるを得ない。

そこで注目されるのは、やはりプラスワン・マーケティングの通信事業を買収したように、他のMVNOを買収して契約数を拡大していくことだろう。大尾嘉氏は買収に関して「前向きに検討している」と話し、積極的に取り組む姿勢を示している。今後MVNO同士の競争は一層激しくなり、脱落するMVNOも多く出てくると考えられることから、買収が楽天モバイルの事業拡大に向けた大きな武器の1つになると考えられそうだ。