総合力では圧倒的にワイモバイルの方が上

確かにMVNOの中では頭一つ抜き出た存在となった楽天だが、低価格のモバイル通信サービスという視点で見た場合、より大きなライバルが存在する。それはソフトバンクのサブブランドであるワイモバイルだ。

低価格サービスの先駆けであるワイモバイルはMVNOではなく、大手キャリアの一角を占めるソフトバンク自身が直接サービスを提供している。その優位性を生かして、充実した店舗網や積極的なプロモーション、そしてアップルやグーグルなどとコネクションを持つソフトバンクの強みを生かした端末ラインアップなどで、MVNOよりまいつきの料金はやや高いながらも、低価格の市場で圧倒的なシェアを獲得しているのだ。

しかもワイモバイルは低価格サービスの先駆けだけあって、他のサブブランドやMVNOの先を行く戦略を積極的に進めており、それが顧客獲得へと大きくつながっている。サポート効率化のためグーグルと手を組み、自身で提供する販売するAndroidスマートフォンを、2世代までのOSアップデートを保証する「Android One」に統一を図ったり、純粋な新規契約者である中高生をいち早く獲得するべく、12月より学割サービス「タダ学割」を開始するなどの取り組みは、他社には見られないものだ。

ちなみにワイモバイルの前身は、PHS事業を展開していたウィルコムと、「イー・モバイル」ブランドでWi-Fiルーターなどを中心としたモバイル通信サービスを提供してきたイー・アクセスの2社。両社が合併してワイモバイルが誕生した当初は、両社の契約数を合わせて約1000万契約を獲得していた。ソフトバンクと合併した現在、ワイモバイル単独での契約数は公表されていないのだが、PHSなどの純減が続くとはいえ、現在の好調ぶりを考慮すれば当時の契約数を超えている可能性が高い。

  • ワイモバイルは「Android One」を採用したスマートフォンを積極投入し、ソフト部分を統一することでサポートを効率化する取り組みを進めている

つまり楽天が、真に低価格のモバイル市場を押さえるには、10倍近い契約数を獲得していると考えられ、なおかつインフラ、サービスなどさまざまな面で圧倒的優位性を持つ相手と戦う必要があるわけだ。正面からぶつかっても勝てる相手ではないだけに、戦略にも相当の工夫が求められることとなる。