賞味期限の延長による販路拡大を狙う
もうひとつ、グレープストーンにとっては、コラボにより販路が拡大することも大きなメリットだ。というのも、東京ばな奈は生菓子で賞味期限が2週間程度と短いため、在庫を抱えることができない。つまり、空港、駅、高速道路などの中でも、よく売れることが見込める場所でないと販売できないわけだ。東京駅の中でさえ、中心部にある客足の多い土産物売り場でないと置けないそうだ。
その点、キットカットとのコラボ商品はチョコレート菓子なので、賞味期限が大幅に伸び、販路の拡大にもつながる。もちろんキットカットの通販サイトでの販売も含まれる。ただ、あくまで「土産菓子」としての付加価値を守っていきたいというのは、ネスレとグレープストーンの一致した目的だ。商品にプレミアム感を持たせるほか、箱やパッケージのデザインに至るまでギフトらしさを重視しているのもそのためだ。
このように、コラボによるメリットはどちらかと言えばグレープストーン側の方が大きいように思えるが、ネスレ日本も「二つ返事で引き受けた」(槙氏)と、非常に前向きだ。
東京ばな奈のアジア人気を海外戦略の足がかりに
「当社のギフト向け商品は、2003年の北海道のご当地キットカットに始まり、市場が地域ごとに限られています。訪日や東京市場は今後の伸びが期待されており、ひとつの大きなギフト市場として開拓する価値があると考えました」(槙氏)
ネスレ日本は現在、全社的にウェルネス(健康路線)、プレミアム化に力を入れているが、それらに次ぐ第三の柱として「海外市場」があるという。キットカットでいえば、カカオや抹茶の健康効果訴求、ショコラトリー、そして今回のギフト市場開拓がそれにあたる。
また、2017年10月26日には韓国にキットカットのフラッグシップ店をオープンし、今後はアジアの他の地域へも拡大を予定しているそうだ。今回のコラボとの相乗効果があるかどうか分からないが、東京ばな奈がアジア圏で高く評価されていることから考えても、影響は小さくなさそうだ。
このように、今回のコラボレーションは両社の戦略上、まさにベストな相手との幸福な組み合わせだったといえる。まず今回のコラボ商品を確実に成功させ、第二弾以降も前向きに考えていきたいというのが両社の考えだ。