しっとりとサクサク、相反する特徴を両立
では、開発に1年以上かかったというコラボ商品は、既存のものとどう違うのだろうか。
基本的に、種類としてはチョコレート菓子であり、形状・味もキットカットがベースとなっている。ただ「バナナ味のキットカットではない」と槙氏も力を込めて語るように、キットカットの持ち味であるサクサク感と、東京ばな奈のやさしい味やしっとりとした食感という、相反する要素を合わせ持っているところが大きな特徴だそうだ。
「東京ばな奈 キットカットで『見ぃつけたっ』」は東京駅一番街・地下1階の「東京おかしランド」で先行販売(2018年1月9日まで)し、関東近郊を中心とする空港、鉄道、高速道路の店舗に順次拡大していく。価格は税抜きで8枚入りが650円、15枚入りが1,200円だ |
キットカットのサクサクとした小気味好い食感は、ミクロン単位の粒子からなる、厚さ2ミリのウエハースをチョコレートでコーティングすることで実現している。東京ばな奈はしっとりしたスポンジと、裏ごししたバナナを使ったなめらかなクリームのコンビネーションが特徴だ。
この2つの魅力を共存させるために、新商品ではウエハースの間に、東京ばな奈の風味を再現したやさしい甘さのバナナクリームをサンド。クリームをなめらかにすることにより、東京ばな奈のしっとり感を表現したという。チョコレートの表面には、バナナの形の刻印を施してプレミアム感を演出。パッケージや箱のデザインも土産菓子らしさを強調している。
コラボの提案はグレープストーンから
実は今回の共同開発は、グレープストーンからネスレ日本へ最初に申し出たことから始まったという。初めてのコラボ相手としてキットカットを選んだ理由について、グレープストーンで営業部長を務める野口聡氏は次のように説明する。
「当社では商品名の通り、『東京』というブランドイメージを大切にしていました。ですので、コラボレーションというニュース性のみで一時的に売れるというのは望ましくありません。ただ、近年急成長しているインバウンド市場についてはもちろん頭にありましたし、東京ばな奈は認知度があるといっても国内やアジアに限られ、欧米ではまだまだ知られていないことが課題となっていました。まずは知ってもらうことが大切、ということで、世界的にブランド価値が知られているキットカットをコラボ相手として考えました」
「お土産文化」は欧米で受け入れられるか?
キットカットが世界的に知られているのは、単にネスレがグローバル企業だから、という理由からだけではない。ご当地土産やコラボ商品、プレミアム商品などを含め、非常に多くの種類があるのは日本だけ。こうした独自の展開が、グローバル規模で注目されているのだ。槙氏によるとキットカットの海外人気は高く、「2009年頃からアジアを中心に抹茶味人気が高まり、2012~2013年、爆買い傾向に火がつきました。勢いは一時期より衰えたといっても、まだまだ売れています」(槙氏)という。
ただそもそも、「お土産」という文化そのものが欧米には馴染みが薄く、キットカットにしても、東京ばな奈にしても、やはり同じ文化を持つアジア勢への売れ行きが圧倒的に高い。従って欧米人相手には、いかに日本の土産文化をアピールし、定着させていくかという、また別の戦略が必要になりそうだ。