やや無骨な外観、乗り心地は高級乗用車
XT5は、最新のキャデラック各車種と共通の顔つきやデザインの雰囲気を備えながら、4輪駆動車であることを明らかにする車高の高さが外観の特徴だ。ドアを開け乗り込むと、高級車のような上質な室内空間があり、内装デザインは目に心地よい豪華かつお洒落な雰囲気を湛えている。
外観からすると、やや武骨な印象も与える4輪駆動車の佇まいでありながら、室内に居ると高級乗用車の快さを伝えてくる。そこがまさしく、ラグジュアリークロスオーバーということなのだろう。
運転をし始めると、何よりその軽快な走りが印象深い。悪路を駆け抜けるためのゴツゴツとした頑丈さはあまり感じさせない。それよりも、車高が私の身長を超える1.7メートルと高いにも関わらず、背の低いスポーティな車種を運転するかのように身軽だ。
前型の「SRX」に比べ90キロもの軽量化を実現していることが、その軽快さを生み出しているのだろう。その結果、車体全長が4.8メートルあるということ以上に、車幅が1.9メートルを超えかなり幅広いにも関わらず、クルマの大きさをあまり意識せず、自在に運転することができた。
キャデラックはデトロイトからニューヨークへ
この気軽な気分にさせる運転感覚は、前型のSRXと明らかに異なる。その背景には、2009年に連邦倒産法第11章(チャプター11)の適用を受け、新生GMとしての再スタート後、グローバルキャデラックの本社をミシガン州デトロイトからニューヨーク州ニューヨークへ移したことも関わっているのではないかと想像する。
重厚長大なモノづくりの街から、世界から人々が集まり文化を生み出すニューヨークへと拠点を移したことで、今という時代を生きる人々が求める感性をキャデラックが身にまとったのではないだろうか。
XT5に乗っていると、とにかく心地よい。運転も楽だ。こう言うと、高性能であることを旨とするドイツ車勢に劣っているのではないかと思い込む読者があるかもしれない。だが、ドイツ車のSUVやクロスオーバー車とは、また違った味わいのある、それでいてしっかり走るクルマにXT5は仕上がっている。
例えば軽快な走行感覚も、高速道路に入るとドイツ車のように腰を落ち着けた安定性を発揮しだす。駆動方式の切り替えにより、もちろん前輪駆動で走っている時も安定感を感じるのだが、4輪駆動へ切り替えればいっそう安心を高める。さらに、スポーツモードを選ぶとハンドルの手ごたえが重くなり、乗り心地もやや硬めにはなるが、快適性を損なうことなく爽快に高速道路を走り続ける。
この感覚は、ドイツ勢と明らかに異なる。そして、日本での利用に最適な走行性能と快適性だと思わせるのである。